じゅーけん

累 かさねのじゅーけんのレビュー・感想・評価

累 かさね(2018年製作の映画)
4.0
原作は未読ながら、気になるマンガとして「顔が入れ替わる」という設定も含み、存在は知っていましたが、こういう物語だったとは(;´д`)
ほぼ知らないに等しい(笑)


不思議な口紅を塗ってキスをすると時間制限付きで顔が入れ替わる。
マンガ原作ならではの突拍子も無い設定。単純な設定ではあるが、お互いに足りない部分を補え合える2人に用いることで、物語に実に深く食い込んでいる。
顔が入れ替わることで生じる利害と心情の変化が絡み合い、欲望と嫉妬が増してゆく程に狂気を帯びてくる心理描写は、物語をよりスリリングに展開させている。

さて、この作品の見どころは、W主演の二人の「演技力の凄さ」これに尽きる。
見た目も性格も違う2人が入れ替わる。そんな設定を女優二人がそれぞれのキャラクターを入れ替わり立ち替わり演じ分けて表現している映画なのだが、「演じ分け」という表現では足りないくらいに凄いのだ。

土屋太鳳でも芳根京子でも、ニナはニナだし累は累。
話し方、立ち振る舞いはもちろん、表情や眼差し、さらにはキャラクターの生い立ちから来るオーラですらそのキャラクターそのものだったように感じられた。
キャラクターを演じているというより、キャラクターが降りていたという方がしっくりくるくらいに。

セリフや動きの無いシーンであっても、その視線の置き方、佇まいだけでそのキャラクターがわかる程だ。
状況や場面に応じて、土屋太鳳と芳根京子の役柄が入れ替わるのだが、『今、どっちがどっち?』という困惑はほぼ無かった。

だからこそ物語に集中出来たし没頭出来たのだろう。

顔を入れ替えた相手により作られてゆく、自分としての輝かしい人生の先にある未来は誰のもの…?

そんな戦慄の葛藤の果てに待つ結末と、主要キャストの迫真の演技を堪能してください(^_^)


※脇を堅める演技派俳優陣の中にあって、横山裕はちょっと浮いちゃってた感じがしました。
私的には、バラエティ等での印象も強くなっているので、才能ある若い演出家という役柄に対しギャップが大きく、そのイメージが払拭しきれなかった感がありました(^_^;)