借金苦で社会のどん底だった主人公の青年の窮地に謎の男が現れ手を差し伸べる。
「居場所、欲しくないか?」
男に導かれるまま、ある「町」へ連れてこられる。
ここでは生きることに何の不自由も無い。
借金取りもいなければ、借金も無い。
あるのは自由と平等。
「町の住人」であるためにはこの町の「ルール」を守ること。
なぜ連れて来られたのか、ここはどこなのか、この町は何なのか…。
疑問を感じながらも、次第にここの生活を受け入れていく…
「意味不明」ながらも「意味深」なタイトル。
「わけわからない始まり」ながらも「引き込まれる展開」。
「え?どゆこと?」
「は?これ何?」
こんな思いが終始つきまとう。
物語が進むにつれて、タイトルに秘められた真相がだんだんと見え始める。
意味がわかってくると、現実味の無い展開なのに変にリアルを感じてくる。
社会という現実の中で「自分」という「役割」をこなす為に生きている。
ならば、社会を外れた者たちの「役割」は…「存在意義」は…。
作中での謎が、リアルへの疑念に変わっていく。
普段気にも留めない些細な違和感や不可解な出来事。煙に巻かれたまま消えていく報道。
これらのことがこの作品により説明がついていくような奇妙な感覚。
世の中が混迷し迷走している昨今。
実は、誰かが仕組んだ事実による「仕組まれた現実」が紛れているのかもしれない。
謎解きアドベンチャーゲームをしているようなこういう感じ、個人的には嫌いじゃない(´ω`)
設定や世界観は奇抜で非常に面白い!
しかし、ストーリーに重視しすぎたあまり、キャラクターや世界観の描写に精錬さが欠けた感は否めない。
出演者は、物語や町のルールの説明の為の「登場人物」でしかなく、個々それぞれのキャラクターが立っていなかったし、
かなり大掛かりな組織が絡んでいるような描写なのに、町の造りや制度がチープで大規模感があまり感じられず、そういう背景も伝わりづらかった。
人物描写が少ないから、気持ちや感情の動きすら見えず、後半の展開に至る経緯が全く理解出来ず、
「え?何でいきなりそんなことに?」とか、
「あれ?そんなアッサリ?」などと、
期待とは裏腹に、ツッコミどころが多くて少々シラけてしまったのが正直なところ。
タイトル通り、必要なのは「数」であって個々の人物像は必要ないという暗示の表現なのかもしれない。
制作側にはこの「核心」が説明不要な「常識」のようなものであったのかもしれないが、
前知識も無く鑑賞するこちら側には、それをこの作品を観て察してくださいというには、それなりの論理的思考と推理力が求められそうで、少々厳しい印象と言わざるを得ない。
だとするなら、終始わけがわからないまま観終わるという人も少なくないのではないだろうか。
もしかすると、作風ではなく「制作費の限界」というシビアな現実なのかもしれない。
いずれにしろ、作品表現の完成度がもうひとつで、物語に引き込まれきれなかったというのが残念なところ。
さんざん言ってきたものの、本音を言えば、
もしかするとこの世のどこかにあるかもしれないこの「町」に、密かな憧れの念が生じているのは、町の住人として引き込まれ始めている証なのかもしれない(笑)
『H i、フェロー。素敵な町ね。その「町」へ行くにはどうすればいい?』