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シンプル・フェイバーのokomeのレビュー・感想・評価

シンプル・フェイバー(2018年製作の映画)
2.5
「嘘はマーガリンと同じ。薄く伸びて体に悪い」


洒落たミステリー風コメディ。
……なのだろうと思います。

物語の大筋は、失踪した友人の行方を追うシングルマザーの素人探偵劇。徐々に明らかになっていく事件の真相や渦中の人間模様は結構ドギツいけれど、
まるで「それが何か?」と言わんばかりに軽妙に、60年代フレンチポップスの洒脱なリズムに乗せて突き詰めずサラリと描く。そこから大人の余裕を感じ取れば良いのでしょうか。
シングルマザーのステファニーと、キャリアウーマンのエミリー。
ひょんな事から友人になった容姿も性格も正反対の2人の、会話の応酬も面白い……かなぁ?
下ネタも明け透けに展開されるそのお喋りは、美化され過ぎていない生々しい女性の実体を上手く捉えている、かも、しれません。
最初はエミリーが完全にステファニーを支配していたけれど、物語が進むにつれて段々と立場が逆転していく。それを、言葉以上に2人の服装で表現する手腕は、さすが実生活もオシャレで名高いポール・フェイグ監督と言うべき……なのでしょうね。


ああもう、どうしても歯切れが悪くなってしまう!
その理由は、上記の内容全てに悉くハマれなかった自分の感性に問題がある事はよく分かっています。分かってはいるんですが、やはりミステリとしての破綻は気になるし、それを洒落た雰囲気で誤魔化されているように思えて鼻についてしまうのは否定できない。
「飾らない女性の姿」をただ下品な言葉を使わせる事で全て表現したような気になっている様子にだって反論したいし、その程度の人物描写で内面を察しろ、服装の変化も気が利いてるでしょと言われても単純に寒い。
GAPとエルメスの違いを言われても分かんねーよ。

やりたい事は明確だし表現の仕方もお上手なのは分かるけど、どうにも駄目だ。
『ゴーストバスターズ』の時にも思ったけど、やっぱりこの監督は自分には合わない。何だろう、「意識高い系」に対して感じる浅薄さと似たようなものでしょうか。それをあげつらって文句を言うのも野暮なので、ここで内容に触れるのは止めます。

代わりに別の話をして良いでしょうか。
しますね。







アナ・ケンドリック超可愛い!!!!!
顔立ちが綺麗なのは勿論なんだけど、それだけじゃない、ぽやっとしたちょっと抜けたところのある表情がもう!! 背の低さといいちょこちょこした動きの小動物っぽさといい、あの溢れんばかりの愛嬌は一体何なんだ。
こう、両手でグっとサムズアップする仕草を小一時間眺めていたい。
何百年も生きたヴァンパイアが取り合いをするような、誰もが羨む絶世の美女なんかじゃない。昨年の『ザ・コンサルタント』で改めて発掘された、ちょっと野暮ったい感じの、それがそのまま「可愛い」に変換される手の届きそうな身近な女の子像。
内向的なオタク系や理系の女子に対する「知ってる人は知ってる」魅力に通ずる感じが完全にドストライクですはい。
今作を観た理由も、ただ彼女が出演しているからというだけの事でした。

それにしても今作、彼女のダサ可愛さを逆手にとったようなキャスティングは素直に上手い。
一見おとなしい女性が、目を見張るような行動力を発揮して、最終的には美味しいところを全部かっさらっていく。
しかし、じゃあそれを観て「女は怖い」と思ったかと言えば全然そんな事はなくて、自分はむしろだからこそ「騙されていたい」と思いました。
人付き合いなんて大なり小なり打算は存在するわけだし、身に危険が迫れば何とかマウントを取ろうとするのは当然でしょう。
それを変に批判したり、判った風を装って踏み込もうとするから痛い目を見る。まさにポール・フェイグ監督の作品に感じる嫌らしさはそれだと、今書きながら思い至りました。

「他人には見せない一面もあるだろう」、それを認知こそすれ理解はしないのが結局一番良いスタンスなのかもしれません。
そうすれば自分はずっと相手を可愛いと思っていられるし、あちらも内心はどうあれ表面上はずっと好きでいてもらえる可能性だってあるわけです。

だから何も問題ないでしょう?
きっと上手くやっていけると思うから、気が向いたらもう一度連絡をくれませんか。それが自分のささやかなお願いですってなにを言ってるんだ僕は。
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