唯

ブレス しあわせの呼吸の唯のレビュー・感想・評価

ブレス しあわせの呼吸(2017年製作の映画)
4.0
主人公の生き様には、人生開き直ることが肝心だと教えられる。
どうせなら、何でも面白がって楽しんでしまえば良い。という、ある種の図々しさを持つ生き方が、明朗でタフで聡明だ。
捉え方を変えれば景色は変わるし、景色が変われば捉え方も変わる。
その状況にならなければ、繋がらなかったもの、出逢えなかった人々が、きっとある。
ユーモアを持って生きる彼の、「ただ生きるのではなく、人生を生きる」という言葉も印象深い。

それにしても、妻の一途な献身さには、女性の強さを見る。
彼女自身の人間性の素晴らしさはもちろんだが、彼への愛情・彼との相性の良さが前提にあってこそ、長年添い遂げられたのだと、思う。
優しさだけでない、それ以上の相手への想いがあって初めて、彼女の逞しさが成立するということだ。

その、妻の愛情を支え続けたのは、やはり主人公自身の愛情や思いやりである。
周囲の人物に向けてのそれに加えて、自分に対する愛が、生を全うする原動力となったはず。
これは初めに述べた彼の生き方と通ずる部分であろう。
と、口では簡単に言えても、どうやったらこうして生きられるだろうかと、感服するしか出来ない。

物語のラスト、それまでの人生を回想する場面が有るが、ここでは不思議と涙は流れなかった。
こういったシーンでは、大抵は若い頃・満足していた頃の描写に泣かせられるものだが、それが無かったのである。
つまりは、彼自身がその時々の「今」を全力で謳歌した結果、現在という「今」も最上に満ち足りていたからだろうと、私は解釈している。

愛とは豊かさである。愛ある所に、更に、愛は育つ。
誰しもが輝けるとは思えないが、誰しもが輝く為のチャンスを手にしている。
私達には、思考がある。言語がある。
唯