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トップガン マーヴェリックのSWDのレビュー・感想・評価

4.5
完全に舐めてた…。
還暦直前でありながらアクションスターとプロデューサーの両方の顔を持つトム・クルーズのドキュメンタリーであり現役宣言。
観客を映画館の座席というコックピットに乗せ、コロナ禍での劇場公開という困難なミッションを遂行する姿はまさに英雄だ…。

元々戦闘機フェチも海軍のマッチョな世界への憧れもない自分は前作が全然ハマらなくて「今更これやるの…?」と不安だったけど嬉しい誤算。
撮影技術の進化、役者自身のキャリアや身体の変化、様々な形で36年という歳月をフィルムに刻み込む。トムクルーズの皺に笑い、トムクルーズの皺に泣かされる映画。

どこまでがCG?と推察しながら映像を追う観客に、製作陣は迷いなく(ほぼ)全て実機での撮影です、と答える。狂気の沙汰ほど面白い。
思い返し、映画人トムクルーズの所信表明とも言える冒頭の展開に涙する。
無人機の普及によりパイロットが不要になる未来は、そのままCGを多用した配信ドラマに取って代わられる映画館とアクション俳優のメタファーだ。
そんな未来に対しマーヴェリック=トムクルーズは「いつかはそうなるかもしれない、でもそれは今じゃない」と答え、マッハ10という限界を越える。越えられる事を自らの手で示す。「まだまだこの席は譲らん!!!」と高らかに宣言する。
次世代への継承だけがテーマではない部分が、凡百の続編映画と一線を画す。

過剰なまでにディテールが削ぎ落とされた敵国の造形は、現実の戦争を想起させず思考停止させてくれる配慮として受け止めるべきか悩んだ。前作のヒットで海軍志願者が大量に増えたように、戦争映画としてのあざとさは変わっていない。
だが社会への不安や不満が増幅する中「何も考えず観れる娯楽映画」を映画館に復活させた功績は大きい。
今はただ、この狂騒に溺れていたい。
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