グラッデン

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のグラッデンのレビュー・感想・評価

4.2
What?(なぁーにぃー?)

鑑賞後、本作の広告類が記したキャッチコピーの空回りぶりが無駄に印象に残った。それは、本作に登場した「マジックキングダム」という名の安モーテルに通ずるモノを感じました。

子供たちを中心に、小さなコミュニティの日常を描き続けることで浮かび上がる今そこにある貧困問題。フロリダの開放的な青空とは対照的に、閉塞感の拭えない貧困がもたらす負の連鎖を垣間見ることで、鑑賞しながら色々と考えさせられる作品でした。

イタズラを繰り返し、文字通りの「悪ガキ」ぶりを発揮する子供たちの満面の笑みは憎たらしく感じ、それに対する大人の批判を相手にしないシングルマザー・ヘイリーのぶっ飛びぶりに良い意味で驚かされた。「生活が苦しくても、ママと友達がいれば大丈夫!」ということを伝える映画なのだと先読みしていました。

しかし、ある出来事を契機に辛うじて保たれていたバランスが崩れていく。ぶっ飛びぶりをポジティブに見て取れたヘイリーが、徐々に壊れていくことが伝わるだけに、見てる側として、痛々しく感じました。

それだけに、憎たらしくも感じた子供たちの笑顔に救われた。そして、底抜けに明るかったムーニーから笑顔が失われていくことが何よりも不安に感じさせられました。負の連鎖が生み出す絶望の説得力は抜群でした。

そうした物語の過程を経て描かれたラストシーンは、シンプルながら個々の解釈が求められる作りでした。物事を解決する手段になり得なかったとしても、個人的には、ムーニーの笑顔を取り戻す、ひと時の魔法であってほしいと願うばかりでした。

物語全般を通じて、説明の無い部分を読み取る必要はありましたが、生活を切り取ったような作風だったことから日常系とも言える作品だったと思います。そして、日常から垣間見たファンタジーとリアルの同居こそ、本作の醍醐味ではないかと。