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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のYMのレビュー・感想・評価

4.3
この国で 住むところがあり仕事がありいつでも映画を自由に観て生きている人の中には この映画を 自業自得だ 親失格だ
御都合主義で美談に仕立てただけだ と 罵る人もいるのだと思う。

わたしには子供がいないけれど、ヘイリーと遠く離れたこの国でも 女性一人で子どもを産み育てていくことの困難さは日々労働する中で痛いほどに感じます。
だからこそ、この映画は、遠い米国のフィクションとしてつくられた若き貧困層の映画などではなく、明日のわたしたちとわたしたちに授かった愛おしい存在とのフィルムなのだと思います。
元々持たない存在は、その資格が無いと切って捨てられていくのだろうか。
求められることばかりが増えていくのに、女は、後ろ盾がなければ愛する子とさえ引き離されてしまうのだろうか。

何が真夏の魔法だ。魔法があるなら、ヘイリーを救ってやってくれ、ムーニーと、ムーニーが自身の意志で離れていくまでずっと一緒にいさせてやってくれ。ムーニーのことを ろくな大人にならない 母親みたいな女になると罵る人がいるかもしれない、けど、弾けるように笑って、踊るように歩いていたじゃないか。
わたしは 親にできることはそれが全部だと思う。
だいたい、ろくな大人ってなんだよ。大人なんか体裁取り繕っただけでほとんどが中身ガキでろくでもねえよ。
親ができるのは、せめて子どもを産んだ責任として 愛している小さな他人に愛していると伝え 毎日が楽しくて自由だと 笑わせること以上に 求められることなんか無いよ。
そうでもなけりゃ、子を成すことはそもそも知的で文化的で金銭的に余裕のある階級にしか許されないと宣って人類なんか滅びたらいい。いらないよ。

自己責任だ 仕方のない結末だという声もわかる でも わたしは女で 決して富裕層でも文化的に秀でた人間でも無いから 絶対にこの映画を白けた目でなんか観られないし観たくないんだ。
今を生きるわたしたちは常にヘイリーであり、ムーニーであるからこそ、どこかにいるヘイリーが 叫ばなくていいように、ムーニーが泣かなくていいように、できることなんか大してないかもしれないけど、何かをしたいし、手を差し出されたら手を差し出して強く握る。
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