足拭き猫

祝福~オラとニコデムの家~の足拭き猫のレビュー・感想・評価

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たぶんかなりネタバレ。

オラは14歳の女の子。1つ違い弟のニコデムは自閉症で感覚が鋭敏、学習が遅い。父親はアルコール中毒、母親は離婚していて他の男性と同棲中、赤ちゃんもいる。

家のことはオラが面倒を見ている。オラは家を綺麗にしたくて時々ほうきで掃除をする。食事はあり合わせで用意したもの、狭い中でニコデムとむさぼるように食べる。夜になると帰ってくる父親にいろいろと相談するのだがそれが面倒な父は文句をたれる。

オラは時々母親にスマホで電話をする。内容は母の愚痴を聞くことで、オラが大丈夫、無理をしないでと励ましアドバイスをしている。

時々児童相談所(?)の職員が家の様子を見にきて「状況はどうか、つらくはないか」と聞かれるが、どうってことはない大丈夫、と答える。

まもなくニコデムの初聖体式。教会で神父からキリストの血と肉とされているパンをもらえるようになる儀式だが、その前に試験をパスしなくてはならない。それに向けてオラはニコデムに勉強をさせるが、独特の感性を持つニコデムはなかなかオラの思うようにはならない。

オラは家を出ていってしまった母親に、初聖体式の時に会えるというのが楽しみ。何回も本当に当日来てくれるのかと電話で確認をする。

初聖体式の後、赤ちゃんを連れて母親は家に戻ってくる。どうやら同棲していた男性に暴力を振るわれたらしい。オラは母の代わりに赤ちゃんを母性全開でかかりっきりで抱く。ニコデムは嫉妬のあまり異常な雰囲気を漂わせて、恐れをなした母親は半日で出ていく。

あきらかに貧困の家庭と分かる中、何が何でも教会に通う二人の子供。だがポーランド人にとって教会に通って初聖体式を受けたり教会で結婚式をするというのは、日本人がクリスマスになるとチキンといちごのケーキを食べて、正月は家族で集まるというのと同じ感覚らしい。もちろんその過程で神父の説教を聞きキリストの教えに触れる訳だが。

キリスト教は「キリストはすべての者を許す。あなたも隣人を許せ」という。オラは許す許さない以前にとにかくニコデムと父と母の面倒を見る。あの小さな体と心で精いっぱい3人を受け止めて、自分がそうしたいからか義務感からかもはや分からない状態で家族を支えている。

キリスト教は「キリストは全ての者を救うために復活したのだ」という。果たしてオラは救われることはあるのだろうか。