アズマロルヴァケル

盗聴者のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

盗聴者(2016年製作の映画)
3.4
深いようで難しい社会派フランス映画

保険会社で働いていたデュバルは会社の厳しい労働によって心身のストレスが原因で会社を辞める。2年後、グループセラピーを受けながらも独身で失業手当てで日々を暮らすデュバルだったが監視組織のクレマンという男から盗聴した通話記録の筆記の仕事を任されることになるのだが、その仕事がやがて次期大統領選やテロ事件の人質交渉に関する重大な盗聴記録ばかりであった。


初見ではかなり難しい内容ではあるものの近年のイスラム国や北朝鮮問題が起こるなかで官僚や政界関係者の重大な機密事項がいつどこで漏洩されてしまうという危機や一般人が見知らぬかたちで国家絡みの事件に巻き込まれてしまうという日常の恐怖を生々しく描かれていて個人的にはまあまあ良かったほうではありました。

政治に関わる人なら監視組織のクレマンを追う治安総局のラバルトの視点で観るかもしれないが、確実に一般人や私が観るとデュバルの不安感は分からなくもなく、誰にも口外ということや辞職しても辞職できにくいこと、そして盗聴記録の内容のことといった秘密裏の仕事のなかでやるデュバルは精神的に前の保険会社よりもストレスがきつかったんだろうなぁと思いましたよ。

ただ、ラストシーンに関してはオチが弱いといった印象で、社会問題が上手く解決し、デュバルも正しい判断を下したことは良かったのだが、まだもう少し捻った展開。もう一段階観賞している人に考えさせられるシーンがあった方がいいのではと良作だけど惜しい感じがただならない映画ではありました。

ちなみに「ハングリー・ハーツ」のアルバ・ロルヴァケルも登場していましたが、彼女の役はグループセラピーで知り合ったデュバルの友人の役で、そんなにがっつりストーリーに絡む役ではなさそうです。

なお恐らくこれが今年最後の観賞映画です。