しの

ミスミソウのしののレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
2.6
‪窮屈な場所に閉じ込められた若さは、そこから抜け出すために他者を求める。彼らにとっては、希望がそこにしかない。だからこそ、その想いが暴走したとき、あるいは裏切られたときの痛みは計り知れない。テーマは非常に興味深いが、目的先行な設定、チープな演出、アンリアルなキャラや展開にノれなかった‬。

そもそも舞台となる田舎町が凄惨な事件を連続発生させるための場でしかなく、設定としての説得力に欠ける。娯楽のない辺境で、警察は全く機能せず、学校は廃校になり、教師は事なかれ主義で、生徒の親は毒親ばかり……。その全てが安易なセットアップでしかないから、胡散臭さが鼻についてしまうし、そりゃ子供たちもおかしくなるよねとしか思えない。白と赤のコントラストも、そこまで独自性ある見せ方に感じなかった。

加えて、キャラ、演出、展開がかなり漫画的。いじめっ子グループの面々や担任教師なんてまさに漫画キャラ然としていて辟易した。演出としては、例えば銃オタクが高揚して独り言で語り出すシーンとか、流美のやたら「エグさ」を狙った台詞回しとか、あざとくてどうもノれない。展開としては、放火にしろ、殺し合いにしろ、キャラの豹変にしろ、「普通の子たちが気付けば…」というのを狙っているのだろうが、前述のようにそもそも設定が目的先行的なのでそういうグラデーションを感じられない。

致命的なのは、肝心のスプラッタ描写がかなりチープなこと。まず全体的に血の色がやけに鮮やかで、噴出する様もCG感満載。また、リアクションも非常に不自然で、かなりの致命傷を負わされているのにやたらハッキリ喋ったり、腹を刺されてワザとらしく吐血したりと、リアルな痛々しさを感じない。その他、丁度いいところにボウガンが落ちていて百発百中で射抜いたり、頭に矢が刺さった状態でコントを始めたり…。そのくせやたらSEでの強調が激しいので興醒めする。

このように、物語やテーマを味わう以前の表層的な部分で受け入れられなかった。「閉塞感による若さの暴走」というテーマは興味深いし、役者も素晴らしいので、適切な設定と演出であればかなりの傑作になり得たであろうに…。
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