sakura

スリー・ビルボードのsakuraのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
3.9
そのビルボード(看板広告)は嵐の前触れだった。。

マーティン・マクドナー監督作品。

監督の最新作、「イニシェリン島の精霊」もミステリアスで、淡々としてる割に目が離せないと言うか。。そして後から感慨深く考えさせられる所は共通していました。

舞台は緑豊かな🇺🇸ミズーリ州エビング(架空の町)。娘を殺した犯人がつかまらないことに業を煮やした母ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。警察とウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)への批判広告の看板を道路沿いに立てた事で、町では騒動が起こり。。

耳にしたことのある、オペラの「夏の名残の薔薇」が聴けたり、他にも数々の音楽が場面毎に使われ、町の雰囲気にも溶け込むカントリー調の曲等好みでした。




--------少しネタバレ--------




看板で批判を受けた、死が迫ってる警察署長の日常シーン。可愛い娘達への長めのキスと奥さんへの優しい眼差し。その1日が本当切なかったです。一見怖そうな署長だけど、実は優しいお父さん。(大泣)

ママ、ママ言うマザコン警官や他にも少し癖のある登場人物多数。良い人が出てこず、血や痛みの描写でもダークなリアリティを感じさせます。

母と元夫、母と息子、母と警官等の会話から滲み出る怒り、憎しみ、やるせなさ。。

燃え盛る炎のシーンに流れるオペラの音楽も圧巻でした。

「怒りは怒りをきたす」

娘を奪われ、亡骸の様になった母親の苦悩が滲み出ているフランシス・マクドーマンドの演技。母の娘への強い愛が、執着から強い怒りへ変わり、怖さを感じました。
署長が手紙に書いたように、愛が怒りを鎮める、愛と憎しみの相互作用がこの映画のテーマなんでしょうか。

のんびりとした田舎町とは対照的な、人々の醜い心が描かれ、許しがたい罪を受け入れることの大変さをヒシヒシと感じました。

終盤の広告会社の若者の些細な気遣いや、署長の手紙や配慮がミルドレッドやディクソンの気持ちに変化をもたらし、空気感を変えていく様。
憎しみは憎しみしか産まないけど、少しの優しさでも人の心は良い方向へ変わるのかもしれません。その象徴としての笑顔は印象的でした。

随所に流れる音楽がとても心に響きます。
そして常にある眩しい緑の風景は心を落ち着かせてくれました。
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