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スリー・ビルボードのmomokaのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.2
娘を殺された母親であるミルドレッドが、未だに捜査に進展がないために警察を痛烈に批判した、3枚の広告看板を設置したことから始まる物語。

ただの犯人探しではなく、主にそれぞれの登場人物の気持ちに焦点が当てられていた。
母親であるミルドレッドは娘のために、かなり破天荒なことをしてしまっているが、実際にあんなに無惨な方法で娘を殺されたら、自分も怒りをいろいろなものにぶつけてしまうかもしれない。
ウィロビー署長のためと、怒りを爆発させるディクソンの気持ちも分からなくもないがかなり度が過ぎている。

「怒りは怒りを来す」
この言葉が、本作の全てを物語っていると感じる。いくらなんでも報復(ちかも勘違い)として警察署に火をつけるミルドレッドの行為は許されないものだし、ディクソンが広告代理店に乗り込みレッドをひどく痛めつけたのも問答無用で間違った行いだ。

怒りや憎しみからは、結局何も生まれない。
ミルドレッドはジェームズの優しさや純粋な気持ちに救われ、ディクソンからも警察署放火の件に関して赦しを得る。ディクソンもウィロビー署長からの手紙で、”愛”の重みを受け止め、レッドからのささやかな優しさにも触れて、改心し始める。赦された瞬間があれば、過去に過ちを犯してもなお罪を重ねることなく踏みとどまれることができるのではないかと感じた。もちろん己れの努力も相当に必要だと思うが。

それにしてもウィロビー署長、素晴らしい言葉を周囲に届けることができるのに切ない。こういう人に限って最期がやるせなかったりするんだよな。

3枚の広告看板からこんなにいろいろなことを考えさせられるとは…。面白い作品だった。
きっと娘に最後に言い放った言葉が「レイプされればいい」であったがために、ミルドレッドは自分への戒めの気持ちも含めて広告看板を設置したのではないかとも自分は考察した。また、本作は様々な差別についても描かれているのでそこも見所だと感じる。

犯人をジリジリと追い詰めていくスリリングな物語では決してないが、じっくりと登場人物の心情に触れて、余韻に浸りたい人にはオススメのクライム作品です。
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