サマラ・ウィービング出演作で未見のものを探していて発見。
スティーヴン・ユァンまで出てるじゃないの。
これは個人的に大当たりの作品。
サマラ・ウィービングとマーゴット・ロビーには共通点が多い。
まずは何よりも顔が似ている。そっくりといってもいい。どっちもブロンドでもある。
年齢も2歳しか違わない(マーゴットが年上)。
何よりも、両者のフィルモグラフィが「俗悪な暴力コメディ」で覆われていること。
同じ「俗悪な暴力コメディ」でも、マーゴットのほうはハーレイ・クインという当たり役以外に、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」や「アイ,トーニャ」などの変化球もあるけれど、サマラのほとんどのキャリアが「殺し合いをするコメディ」で占められている。
また、マーゴットのほうが予算のかかっている映画に出てて、サマラは低予算映画が多い。
なんだか、サマラはマーゴットの「下位互換女優」みたいな感じになってるところがあるんだけれど、私はどちらも好き。
さて、本作の原題は"Mayhem"。「大騒ぎ」みたいな意味だけれど、原題のままではあまり意味が通じないので、「Z Inc.」となっている。「ゾンビだらけの会社」というつもりの邦題なんだろう。
これ、サマラやユァンさんも素晴らしいけれど、何より演出が見事ですよ。
監督はジョー・リンチ。私はほかに「クライモリ デッド・エンド」くらいしか観てないけれど、本作は娯楽映画としての演出が素晴らしい。
どういうことかというと、「脚本には(おそらく)表現されていないことを的確な映像とカット割りで見せる」技術に長けている。
冒頭のエレベータの繰り返しもそうだし、油絵をところどころ挟み込んでいるところ。これはラストに繋がりますね。
「武器準備モンタージュ」も楽しいし、ユァンさんが「セイレーン軍団」を前に啖呵を切るところのテキパキした、かつサイコなカット割り。ほどよいスローモーションの挿入。
あと、人事部長「死神」とサマラが距離を置いて対峙するとき、サマラが指をちょっとだけ動かして"Hello"を表現するのね。
こういうのは「ただ脚本に従って映像化するだけ」では絶対に表現されないもので、理想的な映画監督の仕事というのは、「脚本では表現されてないことを豊饒な映像にすること」。その意味で、見事だと思いました。
脚本もぶっとんでて非常によろしい。
邦題が表す通り、本作は広義の意味でのゾンビものではあるけれど、ゾンビ側が主人公の映画ってあんまりない。
あ、「ウォーム・ボディーズ」があるか。あれも面白かったな。
全体の構成が「死亡遊戯」になってるのも楽しいし、タイムリミットものでもある。
この設定なら、普通は「タイムリミットまでどう逃げ切るか」という発想の映画になるんだけれど、これは逆に「タイムリミット内に仕事をなし終えたら心神喪失での無罪を勝ち取れるので頑張る」というセッティングになってる。
あと、私の大好きな「アパートの鍵貸します」にも通じる、「社畜がメンチュになる映画」ってところも好感が持てる。
あの映画では邦題にもある「アパートの鍵」だけじゃなく、「重役専用トイレの鍵」が象徴的なアイテムだったけれど、本作はまさに重役フロアへの鍵を取っていく「面クリゲーム型(aka「死亡遊戯」)」だしね。