グラッデン

ブリグズビー・ベアのグラッデンのレビュー・感想・評価

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.2
『信ずるべきは予言より家族だ』

幼くして誘拐された主人公の青年・ジェームズは、誘拐犯が彼を洗脳するために自ら作った架空のテレビ番組『ブリグズビー・ベア』を見て育つ。誘拐犯の逮捕により、ジェームズは本当の両親と再会し、外の世界に解き放たれるが、「人生の全て」ブリグズビーのことを忘れることができず、自らの手で続編を制作することを決意する。

ブリズグビーが醸し出す絶妙なレトロさ・安っぽさ、番組の存在を神格化するヲタク気質のジェームズの必死さがコミカルさも引き出すが、冷静に考えると、彼を巡るシチュエーションは非常にハードである。

閉ざされた監禁生活が彼にもたらした特殊な規範性は、監禁生活と開放を描いた映画『ルーム』の描写を思い出した。自分の想像が追いつかない部分もあるが、ジェームズにとって、監禁されていたシェルターから見た景色が「世界」であり、生活に寄り添って生きてきた架空のテレビ番組が「人生」なのである。

一方、息子と25年ぶりに再開した両親は、失われた時間を取り戻そうとする気持ちの強さは随所に垣間見える。両親は彼と過ごす現在の時間を大切にし、彼の願いを叶えようと気を揉むのだが、当の本人は(両親から見れば)「洗脳の道具」だったクマ=ブリズグビーに夢中なのだから、心中穏やかではないだろう。

子供の頃から抱くブリズグビーに対する純粋な感情を大切にする息子と、ブリズグビーを忘れて欲しいと願う両親のコントラストが印象に残りました。そうした親子の葛藤に加え、映画作りを通じたジェームズの精神面の解放と成長、もちろん彼が心酔するブリグズビーの独特な世界観の融合こそが、本作の魅力であると考えています。。

あと、『最後のジェダイ』のインパクトも記憶に新しい、マーク・ハミルの起用が鑑賞前から気になっていたのですが、「なるほど」と思える起用であり、色々な意味で最高でした(笑)公開中の『ワンダー 君は太陽』とともに『スター・ウォーズ』ファンにおススメしたい作品です。