Kachi

007/ノー・タイム・トゥ・ダイのKachiのレビュー・感想・評価

4.5
【クレイグ・ボンド有終の美】

ここ数日、007作品を観続けて愛着が湧いてきたこのタイミングでの鑑賞。過去作をしっかり観ていれば、クレイグ・ボンドシリーズの中では最も分かりやすい作品だと言えるかもしれない。冒頭のマドレーヌ幼少期のエピソードも含め、作品世界への誘い(いざない)方が秀逸だった。

引退し弛緩し切ったボンドが再び渦中に放り込まれるまでの緩急も見事であった。小気味良いボンド節も健在。ガジェットも前作「スペクター」の時の二の足を踏まず、きちんと機能したあたりも今回でしっかりとケリをつけることを明示してくれているようだった。

備忘録として3点留め置く。

1. 日本が随所に
いろんな人が言及しており映画鑑賞後に読み漁ったが、答え合わせをしているような感覚だった。能面、畳、日露係争地、生物化学兵器(第二次対戦中の日本の731部隊を想起)、因果応報の思想、そして恐らく安藤忠雄建築らしき要塞。

本作こそ、普段はなかなか発揮できない日本人ならではの小さな気付きがたくさんある作品ではないかと。

2. 懐かしきキューバ
海外旅行で一番思い出深かったキューバが僅かだが出てきたあたりも個人的にはとてもツボだった。キューバパートでのみ出てくるボンドガールは、キューバ出身の女優ということで、配役も納得。もう少し堪能させてもらっても…とも思ったりしたが、ストーリー全体を考えれば良い塩梅だったと。

3. 過去は追ってくる
本作は、過去との向き合い方を考えさせるようなセリフが多い。クレイグ・ボンドならではの特徴なのかもしれない。他のジェームス・ボンドシリーズと今後は比較しながら本作をより楽しみたいなぁと今は余韻に浸っている。
Kachi

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