彦次郎

007/ノー・タイム・トゥ・ダイの彦次郎のレビュー・感想・評価

3.8
触れるだけで感染させることができたり、DNAを指定した人のみ殺すことができるナノマシンによる「ヘラクレス計画」を防ぐべくCIAの旧友から依頼を受けた引退した英国諜報部員ジェームズ・ボンドの活躍と愛を描いたシリーズ25作目。ダニエル・クレイグ版としては5作目にして最終作。ダニエル・クレイグ版はスペクターがそれまでの敵組織の上部組織であるような構成やジェームズ・ボンドが007になるまで描かれていたり、前作の直後から話が始まったりと今までのシリーズとは異なる展開となっており所謂マンネリ化を防いだためか評価の高いものになっています。そして演じるダニエル・クレイグが弱さもあるけど強靭な肉体とスペックを持ちかつストイックで女性にも真摯というショーン・コネリーからのボンド像とは違ったスパイを体現したことも大きいかと思われます。こんなことを長々と書いたのは本作はまさにその集大成となっているからです。ネタバレなしなので詳しくは記しませんが完結編として今までのシリーズを観ていると衝撃的ですらあります。
冒頭からの能面をつけた男と少女時代のマドレーヌとの邂逅というサスペンスから『スペクター』で片をつけて愛するマドレーヌと逢瀬を楽しむもヴェスパーの墓参りからの爆破トラップと襲撃という畳みかけるようなアクション全開ぶりでひきつけられました。それ以降はサスペンス重視(もちろんハードアクションも備えてあるけど)ですが個人的には本作は愛の物語(家族を奪われた男と家族を奪われそうな男の図式でもある)として捉えております。
ボンドへの裏切りはお馴染みとしてもスペクター構成員たちの末路はかなり意外で前作の敵が「かませ」となる少年漫画的要素が入り込んでいるのもシリーズとしては異色。ただ元首領にしてボンドの義兄ブロフェルドが結果的にマドレーヌとボンドを再度結びつける仲人みたいな存在でしかなくなっている扱いは残念。残念と言えば本作のラスボスたるサフィン。日本かぶれなテロリストで世界的に害をなそうとする悪党ですが過去にスペクターに家族を殺されているという同情すべきところができてしまいスッキリしませんでした。
個人的には新人CIAパロマがテンション高めで酒飲んだりとキャラが面白く且つ演じるアナ・デ・アルマスが超絶美人ではだけたドレスで眼福を与えてくれるとあって寧ろ彼女をもっと掘り下げてもらいたかったです。まあ本作の意図とは離れてしまうしそれでは従来の007シリーズと同じになってしまうから無理だったのでしょう。
ボンドの後継者が黒人女性ノーミだったりQが同性と交際しているような設定だったりとこれまで以上にポリティカルコレクトネスに配慮しているような感じ(黒人だったり同性愛者が駄目という訳ではないので誤解なきよう)で映画製作の大変さも偲ばれました。
映画終わりに気になる1文が出ていましたがこれはいかなる意味か…。これこそ予想を詳しく書きたいところですが26作目がいかなる作品になるか期待するとだけにとどめておきます。
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