ミャンマー北部カチン州にある翡翠鉱山。
内戦の混乱で業者不在となった山には、違法採掘する人々があとを絶たない。
夢はもちろん一夜にして大金持ちになること。
16歳で翡翠鉱夫になって足かけ26年、家に帰ってくることも送金することもほとんどなく、その間にアヘン中毒となり、刑務所に入った兄。
出所した兄と16年ぶりに再会した弟は、兄に対して怒りの気持ちを持っている。
なぜ家に帰ってこなかったのか。なぜアヘンに溺れたのか。
再び一攫千金の夢を見て山に向かった兄に同行してその答えを見つけようとする、かなり私的なドキュメンタリー。
ほとんど一緒に暮らしたことのない兄弟の会話ははじめはぎこちないものの、徐々に距離が縮まっていくのが分かる。
エンドロールクレジットのdrug user(吸毒者)という表示で分かったのだけれど、ラストでアヘンを吸うカットは、どうやら兄と部下によって演出された場面であるらしい。
ボスが部下をねぎらうものなので兄自身が吸うわけではないが、あれほど兄が再びアヘン中毒になることを怖れていた弟にあまり嫌悪感が感じられないのは、鉱夫の労働の過酷さ、自身が罹患したマラリアの苦しみを実感したからにちがいない。
兄が長年家をかえりみなかった理由は分からないままだ。
そもそも、16歳で台湾に留学した弟が、16歳から鉱夫として過酷な環境に身を置いて、疲れはてた体と気持ちをアヘンで癒やしながら、翡翠の夢に取り憑かれていた兄を理解しようなんてどだい無理な話だろう。