こたつむり

友罪のこたつむりのレビュー・感想・評価

友罪(2017年製作の映画)
2.6
♪ 孤独な人込みの中 ただ埋もれて
  押し寄せる光の中 一人漂う

「心を許した友は、あの少年Aだった」
というキャッチコピーに惹かれての観賞。
「少年A」と言えば“神戸の事件”を連想しますからね。やはり気になります。

…が。
実際に起きた“神戸の事件”を掘り下げるわけでもなく。創作部分も“風呂敷を広げすぎ”た感があり、見当違いの方向にボールを投げている印象は否めず。コレジャナイと呟く仕上がりでした。

更に上段から言うならば。
現実に起きた事件をモチーフにするならば、最低限“自分の思想”を固めたうえで、その上に“魂の叫び”を混ぜないと“興味本位”で物語をこねくり回しているようにしか見えません。

勿論、本作の姿勢は真摯です。
ふざけた部分やくだけた部分はありません。出来る限り「現実的であろう」選択を心掛けているのは十二分に伝わってきます。役者さんの熱演もスゴいと思います。

でも、ヒリヒリしたものを感じないんです。
生きるか死ぬか。その極限まで追い詰めて振り絞った主張がないんです。単純に感情を爆発させた叫びでは心は動きません。それを活かすための“覚悟”がなければダメなんです。

何しろ、素材となった事件は軽くありません。
瞬間湯沸かし器のように他者を傷つけるのではなく、考える時間があっての“殺傷行為”は、そこに至るまでに積み重ねた“何か”があるわけで。他者に反省を促されただけで下を向く筈がないんです。

というか「友の罪」って。
このタイトルの意味を見逃したのは僕の失策。
“加害者に寄り添う”ならば、尋常ならざる覚悟が必要。そして、それを容易に果たせるはずがない、と鑑賞前に気付かないとダメですね。簡単に他者と融和できるなら戦争は起きないと思います。

まあ、そんなわけで。
色々な意味で考えさせられた物語。
ただ、考えすぎて作品の裏側に踏み込むと肩が下がりますので…瀬々敬久監督の真面目な筆致と瑛太さんの圧倒的な演技だけを味わう…そんな“ライト”な姿勢をオススメします。勿論、それが正解かどうかは別の話ですが…。
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