バナバナ

泣き虫しょったんの奇跡のバナバナのレビュー・感想・評価

泣き虫しょったんの奇跡(2018年製作の映画)
4.0
一度、将棋の奨励会を年齢制限で退会した人が、社会人を経て戦後初めてプロ棋士になったという、瀬川晶司さんの実話。
監督も、自身も17歳まで奨励会に入っていたという豊田利晃監督がされています。ですので、奇をてらったらところはなく、実直な作りの作品になっています。

瀬川さんは、最初は、自分は必ず4段になってプロ棋士になれる、
という根拠の無い自信を持っていたけれど、だんだん残り期限が近付いてくると、焦りが出たのか勝てなくなり、退会を余儀なくされます。
これって、プロゴルファーがよくなる病気、イップスみたいなものなのかな。
本来はもっと実力があるのに、緊張やプレッシャーで本来の力が出せなくなるところが似ているように思います。

瀬川さんは、子供の頃や奨励会に入ってから、プロ棋士になる事を諦め去っていく人たちをたくさん見送ってきたけれど、まさか自分もその一人になろうとは…。
幼友達も指摘していましたが、勝った時の自分を肯定できない、イメージできない弱さ、
というものが行く手にブレーキをかけていたのかもしれませんね。
一般人に戻って、また将棋を「好き」になれた事が、この方にとっては転機だったのでしょうね。

子供の頃からの自分の夢を叶えて、それを仕事に出来る人というのはほんの一部ですが、長い道のりを経てそれを成功させた方のお話です。
しかし、決して華やかではなく、脚を水面下で必死にバタバタさせているところをしっかり描けていたところが良かったです。
バナバナ

バナバナ