バナバナ

ある男のバナバナのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

離婚してバツ1子持ちで故郷に帰ってきていた里枝(安藤サクラ)は、他所から移り住んできた谷口(窪田正孝)と知り合い結婚。
下に娘も生まれ、幸せな結婚生活を営んでいたが、突然谷口は職場で不慮の事故に遭い、他界してしまう。
里枝が谷口の家族に連絡を執ると、亡くなった夫は谷口大祐ではなく、別人だったことが判明する。
里枝は離婚した時に頼んだ城戸弁護士(妻夫木聡)に、本当の夫のことを調べてもらうのだった…という展開。

妻夫木聡が出てきたら暗い、暗い。
絶対この弁護士にも何かあるんだろうなと思ったら、在日三世で日本国籍に帰化したという設定である。
お金踏んだくる系の悪徳弁護士なのかと思ったが、弱者の味方みたいな感じで、結構熱心に調べてくれるのは、こういう背景があるからか。

『市子』に話が似ているというが、城戸が調べた結果、谷口(窪田)の中身はきれいなままである。
友達家族が殺され、顔がそっくりだとここまでこじれるのかな。
市子からしたら「なに甘えてんだ!」と怒られそう。
谷口は若くして死んでしまったが、里枝たちと暮らした最後の数年間は幸せだったことだろう。
里枝の息子も谷口を慕っていて父親と認めていたし、谷口自身も立派な人格なのだから、別にここまでしなくても、自分の戸籍のままで誰も自分を知らない土地に移るだけでよかったのでは…と思ってしまった私は、谷口の兄側の人間だろうか?

小見浦を演じていた柄本明がむちゃくちゃ怖くて、怪演だった。
里枝の息子役の坂元愛登くんと、谷口の元カノ役?河合優実さんが、今ちょうどTBSドラマ『不適切にもほどがある』にメインで出ていて面白い。
坂元愛登くんは今より2年位前の撮影だったのか、まだ身長も低くて子供らしい姿だ。

ラストをみると城戸弁護士は「日本人らしく」にこだわる余り、背伸びして結婚してしまったのだろうか。
だから自分を殺しているところがあり、フラストレーションが溜まっているのか?
「自分らしく生きる」ことを周囲からセーブされている人は、意外と少ないのではないだろうか。
結局自分がどう生きるか、生きたいかは、自分次第なのではないか。
そういう意味では、貪欲に生きようとする『市子』は、映画的には面白いのだった。
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