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バッド・ジーニアス 危険な天才たちのblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.8
その評判の高さから気になってたやつ。

カンニングを扱った映画は多いわけだけど、最近は観なくなったなぁって印象があって、何故?今、タイでカンニング映画が作られたのか?
中国に実際にあった集団カンニング事件を下敷きにしてるらしいとか、とにかく観て確めたいことがある映画だった。

自分が知ってるカンニング映画は基調として青春ラブコメ路線でそこにカンニングのスリルや恋の鞘当てなんか盛り込んだ穏当なコメディばかりだけど、これは全然違った。

何より深刻さが違うんだよ、カンニングする動機の。
主人公は天才的な頭脳の持主の女の子リン、中学生まで成績は全科目オールA、その実力を認められ学問で名門私立高校に特待奨学生として入学する。

名門だけあって他の生徒はみんな大金持ちの子息ばかり、親がしがない教師の完全な庶民のリンは環境に戸惑いながらグレースとその彼氏のパットと友達になる。

そんなある日、グレースからテストの答えを教えてほしいと懇願される。ある点数以下だと自分の好きな演劇に出れないから、と。
リンはお勉強ができるだけの秀才ではないので、洗練された手口のカンニング・プランを立て、グレースに高得点を取らせる笑
そして、今度はパッドからもカンニングをさせてしほしいと依頼される。成績が悪いと親が車を買ってくれないから、と。

そう、この2人に限らず、この学校、特待生以外は金持ちのボンクラ息子、娘ばかりで、この2人を通じて、俺も、私も、と次々とカンニング依頼が笑
結局、リンは巨額な手数料を条件に集団カンニングを引き受けることに。

ここまでで、ハッキリ画かれるのはタイの深刻な経済格差なんだよ。
ボンクラ息子、娘達はそもそも、親が学校に多額の寄付(まあ、実質ワイロねw)をしてる。
なので本人の努力で入学してるわけじゃないのがかなりいるんだよね。
しかも、動機の身勝手さと軽さに呆れるよね、車ほしいとか、劇に出たいたとか、、
それに比べでカンニングを引き受けたリンは貧しさから、叶えるのが難しい海外留学の夢があるから、このボンクラ達のポケットマネーがどうしても必要なんだよ。この両者の動機の軽さと切実さのコントラストがすごい!

この後、集団カンニング作戦は思わぬところから綻びが出て、露見して特待奨学生を剥奪されるリンは追い詰められて、またしてもボンクラ集団に依頼され"STIC"という、海外の学生向けのアメリカの大学受験資格テストのカンニング作戦に邁進することに笑

すじだけ追ってると自業自得でさらに窮状に追い込まれるリンはコメディの典型として見れるけど、本当にこれが自業自得というだけで切り捨てられるのか?ってことだよ。
もし、リンの親が金持ちなら、また、もっとしっかりした奨学金制度があれば彼女はこんなことせずに済んだわけで、おそらく海外留学もすんなりできたはず。
1回目のカンニングがバレた時も重いペナルティーを受けたのリンだけ。
他の連中は親が多額の寄付してるからスルーなんだよ。
学校の中も社会と地続きで不公平で腐敗してるのだと言いたいんだと思った笑

都合、2回の大カンニング作戦は色々工夫して、ハラハラドキドキおもしろサスペンスに仕上げてるんだけど、後ろにある背景が途轍もなく重いんだよ!
生徒たちのドラマの中で、持つ者の持たざる者への無意識の差別意識が激しく表出するシーンもある。ここなんか"パラサイト 半地下の家族"のクライマックスを彷彿とされるぐらいの強烈さ!

話題になるのも納得だよ。カンニングを切り口にここまで深く社会構造のおかしさを画いた映画はないと思う。
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