えむえすぷらす

ヘロイン×ヒロインのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

ヘロイン×ヒロイン(2017年製作の映画)
5.0
Netflixにて。怪我などでオピオイド鎮痛剤を処方され、それを常用するようになった人がヘロインやフェンタニル、カーフェンタニルに手を出して過剰摂取で死亡する事故が激増している中西部のブルーカラーの街ウェストバージニア州ハンティングトン。薬物専門法廷の判事、過剰摂取救命に当たる消防官、ストリートに立つ女性(多くは依存症患者でもある)の保護に取り組むボランティア女性の三者三様の戦いを描いたドキュメンタリー。

ある消防官は2ヶ月で27人もの過剰摂取事案に遭遇したと語った。
女性消防官はオピオイド拮抗薬ナロキソンを消防車にも搭載させて救急車の到着が間に合わない時は躊躇なく使って欲しいと伝えている。

薬物専門法廷の判事は違反者には適切な刑罰を施しつつ依存症からの離脱を試みる人たちに優しく励ましている。そして中には再び薬に戻る事なく裁判所のプログラムを終えて卒業する人もいて、その時は心から祝福を与えている。ともかく怒っても何も得られない。一人でも救うために法廷が為すべき事を地道にやっている姿が描かれる。

街に立つ少女、女性。この町で売春容疑で逮捕されるのは彼女達。そしてそんなあり方に対して客側も逮捕されるべきだと保護に取り組む女性は言う。彼女は教会の短期宿泊施設に顔見知りの女性を受け入れてもらい薬物依存症から抜け出られる道がないかと相談に乗っている。

三人ともやっているのは賽の河原の石積みだろう。積んでも積んでも崩れる。でも彼女たちは諦めず積み続ける。そしてその中には彼女らの期待に応えて新しい生活に踏み出す人も出てくる。

薬物依存症の人の立ち直りはこのような人たちの善意によるところが大きいと思う。ともかく辛抱強い事。「5ヶ月間クリーン!よかったね。前回はいつだった?」「3年前でした」というような会話がある。また薬を使ってしまう事は頻繁にある。そのことに諦めない不屈さがないと彼らの手助けなんかできない。