えむえすぷらす

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

5.0
なんとも言い難い作品なんですが、原作読むのが一番な気がします。アメリカの自治と法制度のあり方などあった上でダメ男の視点で全体像あ描かれる。ディカプリオが演じたダメ男アーネストの声、台詞のいい回し方が見事すぎて本当にどれだけ「イケメン」扱いされてもダメさの香りが立ち込める。
そんな甥を見つめるヘイル(デ・ニーロ)の建前に隠れた本音、神の言葉やオセージの人々の友達を自称しながらあからさまな欲望を正当化する論法は当時のアメリカのマジョリティに属した人らしいものだった。
 アーネストと結婚したオセージの女性モリー。糖尿病を患っている中で彼女はアーネストのダメ男、おバカなのだとおそらく自覚しつつ裏表の少ない単純さといわゆる「イケメン」を愛したが、彼が彼女に近づいた経緯自体に裏があるという性質のもの。
そして次々と人が死んでいき、どんどん手段が雑になっていく。

原作はFBIの前身である司法省捜査局(Bureau of Investigation)からテキサス・レンジャーなどのちの特別捜査官の時代には考えられないような現場叩き上げの捜査官が送り込まれと面白そうな話が並ぶ訳ですが、脚本開発のなかでそういう内容が上がってきてディカプリオがダメ男視点で都作り直させたらしい。このおかげで捜査と裁判パートがわかりにくいものにはなっている(原作を読むとわかる部分は多いです)。

しんどい作品ですが確かに目を離させない力があって、スコセッシ監督の配信・映画の先行作『アイリッシュマン』よりもパワーが増していると思う。いい音響で見た方がいい作品だと思います。