えむえすぷらす

バービーのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
5.0
現実社会(男性優位)とバービーたちの楽園(バービー達がケン達より優位)が鏡合わせで配置されていてそこを行き来する形で物語が進むにも関わらずそれを覆す社会変革を訴えている訳ではない。女性が平等を勝ち取るにはまだまだ程遠い状況を示す描写もある一方で楽園側は楽園側で鏡像関係の存在であるケン達がやはり地位が低い。
そんな状況を揺るがす事態が起きて主人公は悩みそして戦う事になる。

何の為に戦うのか。単に以前に戻せばいいのかという命題が実はずっと存在している。それに対する回答は革命は簡単に成就しない。でも理想は捨てるべきではないし一歩ずつ勝ち取るしかない。だから安易な勝利は与えられない。

勝者と敗者にさせない作りは優しさと厳しさを併せ持っていて、こういう着地があるのかと驚いた。私はずっとどこに話を持っていくのかっていうのが気になっていたのですが、これはほんと甘くない。現実を踏まえた着地でだからこそ全方位で元気づけようとする結末にできたのだと思う(それは男性も女性も関係ない)。

情報量とアクロバティックな視点反転を駆使した寓話形式の物語の傑作だと思う。

エピローグの意味についての私見(ネタバレ)はコメント欄に書いてみた。当たってるかはわかりません。

補足。冒頭のシーンが残酷なのはその通りで元ネタもそういう性質のものなんですが、本編中でもおもちゃで遊ぶお子様のある種の残虐性は当のオモチャの立場としてバービーたちが証言しているので「現実」の反映そのものです。あのシーンが残虐だという場合、元ネタも批判して欲しいです(というかそこまで計算して引用元は選んでると思う)。