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共犯者たちのkyokoのレビュー・感想・評価

共犯者たち(2017年製作の映画)
4.5
2008年の米国産牛肉BSE問題に抗議した韓国ろうそく運動。その報道から当時の大統領李明博によるテレビ局(KBS、MBC、YTN)への政治介入が始まった。強引な社長解任、天下り新社長による番組改変、プロデューサー、記者、アナウンサーの解雇と、露骨にえげつない。李明博が国民に向かって喋るだけの「こんにちは大統領」とかいう番組なんてまるで北朝鮮みたいだった。

もちろん社員たちは黙ってはいない。最初はそれぞれで起こした抗議行動が次第に局の垣根を超えた大規模なストライキへと発展していく(一丸となる場面は胸熱だけれど、3社の記者3人がWe are the Worldばりの合唱を見せたときは笑ってしまった)。
それでも記者やPDが検挙されたり解雇されたりは続き、政権が朴槿恵に変わってからも保守政権とマスコミの癒着は続いた。あの「セウォル号事件」で誤報を承知で流し続けたときの報道局長はほんと頭おかしい。

今作の監督チェ・スンホはマイケル・ムーア方式でこの国のメディアを崩壊させた当事者たちにアタックしていく。
誰も答えない。そして逃げ足早っ。
それでも執拗に追求をやめないその原動力になっているものは「記者が質問できなくなったら国は壊れる」という恐怖心。

日本のマスコミにこれほどの気概があるだろうか。
いや、マスコミというより、日本人の「自分に関係なければそれで良し」という無関心になりがちな国民性のほうが問題か。
「1987」や「タクシー運転手」を観たときと同様に、自分たちで変えられる力を意識して持っている韓国国民をやっぱりちょっと羨ましいと思ってしまう。
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