そのじつ

さびしんぼうのそのじつのレビュー・感想・評価

さびしんぼう(1985年製作の映画)
5.0
尾美としのりが見たくて。最高じゃないですか!高2の秋から始まるこの物語、まだ子供でいられる最後の時間の結晶として煌めいている。

「転校生」では8ミリ、本作では一眼レフを抱えた男の子として登場する尾美としのり。尾道の風景をファインダー越しに切り取る仕草もカントクの自己投影された人物のように感じる。
写真に詞をつけたりしてナイーブな文化系かと思いきや、ヘンテコなイタズラを悪友たちと次々やらかすいたずらっ子でもある。

元気いっぱいの彼が悪友たちにないしょで港にひとり駆けつける。その視線の先には黒髪の少女。(カツラの毛量が多すぎて顔が小さくさびしげに見えるのは計算か?)
ファインダー越しに見つめるだけのヒロキ(尾美)。彼は恋をしていた。

一転、家に帰ると「勉強しなさい」が口ぐせの、いつもピリピリしている母親(藤田弓子)が待っている。お寺の息子である彼の父(小林稔侍)はポーカーフェイスで我関せずの体。母のヒステリックな愚痴にウンザリ気味のヒロキだが、父の存在の希薄さから見ても母子の関係は密接である。

そんな楽しくも平凡な毎日に闖入者が現れる。オーバーオールにキャスケット、顔を白塗りにした「さびしんぼう」と名乗る女の子。彼女にヒロキも母も翻弄されハチャメチャ椿事が続出するのだが、憎めない素直さも見せるさびしんぼうの存在が気になり始める。

こうして回想していてもたくさん詰め込まれたエピソードのひとつひとつが面白くて、輝いていて、嬉しい気持ちが溢れて来る映画だった。


以下ネタバレ↓




黒髪の少女に恋するヒロキに、さびしんぼうは片想いしていた。
筋を追うと、母がむかし恋した人の面影をヒロキに投影しようとしていたのかな?と思うのだが、さびしんぼうとの別れのシーンを見ると、時空を越えて自分の息子に恋をしていたのか?ともとれる。この不思議に甘美な感覚すごい。さまざまな想像をかきたてるシナリオと画の力が本当に素晴らしい。
映画見て久々に泣きました。

そして♪たんたんタヌキの〜事件のくだりも大好き❤
先生のスカートが落っこちちゃうエロギャグ感覚も懐かしい!「まいっちんぐマチコ先生」「オーモーレツ!」「ハレンチ学園」など昭和はこういうネタの宝庫でしたな…

尾美としのりは10年くらい前ドラマで見て好きになりました。彼の主演にして最高傑作と思える作品を見られて満足です。
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