グラッデン

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅のグラッデンのレビュー・感想・評価

3.4
楽園の記憶。

生誕170周年を迎えたゴーギャンといえば、ポスト印象派を代表する画家として教科書的に知られる存在であり、南国・タヒチを題材に豊かな色彩を使った作品の印象が強いと思いますが、本作は彼のこうした作品群のルーツとなったタヒチの日々を描いています。

作品が支配する陽の雰囲気とは異なり、喜怒哀楽がハッキリと描いた興味深い内容でした。印象に残ったのは、作品の中で描かれたゴーギャンの画家としてのプライドでした。
ゴーギャンは、画家というか芸術家における作品作りが生活のための手段ではないことを強く主張するものの、食っていかねば作品を作ることができないという現実に何度も直面します。純粋な姿勢が、彼を作品作りに突き動かすとともに、大きな苦悩を抱えることになることを伝えていたと思います。

こうした芸術家としての純粋さと苦悩の表裏にある関係性は、作品のキーとなる黒髪の女性・テフラとの日々にも現れていたと思います。
彼女の持つ何にも束縛されない存在感が彼の作品意欲を駆り立て、愛情を育んでいきます。しかし、徐々に理想を追い求めるあまりに束縛し、そしてその状態を維持するために制作活動を犠牲にしていきました。何故そこまでと、感じることもありましたが、こうした不器用さこそ、芸術家の生き様なのかもしれないと考えるようにもなりました。

ゴーギャンの作品は好きで、印象派関連の展覧会などに足を運ぶと必ずチェックしてるのですが、こうした背景を学んだ上で観ると見方が変わってくるかもしれないですね。