三四子

1922の三四子のレビュー・感想・評価

1922(2017年製作の映画)
4.0
なるほど、暗い。が、しかし面白かった。自分にも悪いところはあるくせに殺された途端物凄く被害者面し始めた奥さんが面白かった。元々の性格もあるだろうし、単に主人公の幻覚だから特に主人公を責めるような振る舞いをしてるのかもしれないけど。

この話で主人公は怒りのあまり別の人格が生まれ殺すことに固執してしまった、短絡的な愚かな行為だみたいなこと言ってたけど私はそれを聞いて「しょーがなくね?」って思っちゃったんだよなあ。
まだ男性優位の時代に自分で弁護士立てて自立してる妻はもちろん偉いんだけど、父と息子共に楽しくやってる農場をああもこき下ろして恨みを買わないと思わない妻も悪いよ。
もちろん人殺しをしてしまって時点で悪いのは100%主人公なんだけど、妻も思いやりとか他人を尊重する力が足りなすぎる。
例えめちゃくちゃムカついても人殺しはいけませんよって話だからいいんだけど、"映画"というコンテンツを楽しんでいる視聴者だから妻を殺して瞬間ヨッシャッ!ってなっちゃったね。
難しい話だなあと思います。


好きなシーンはやっぱりネズミが妻の死体の口から出てくるシーンかな?
死んでしまった以上所詮単なる肉の塊になって、生きてる人間からしたら口にネズミが入り込むなんて醜悪でしかないんだけどそれが通用しないのが良かった。あと牛で味を占めたのか、牛舎にまで入り込んでくるネズミも良かった。
妻を殺せば次は裕福な隣人が気になってキリがない、というのもテーマとして良かったと思う。

個人的に妻を殺した罪が作中で大きく取り上げられなかったのがいい。妻を殺した自責が主人公と子供には確かにあるけれど、法律上は運が良くて、加えて田舎の風習的に何もなかったことになってたのが好き。
法に裁かれるかどうかが罪の在処じゃないって感じ。
息子も思考にスポットが当たらなかっただけで主人公と同様にずっと辛い思いをしていて結局あんな最後になったわけだろうし。息子が敬虔な宗教的思想を持ってたというのも法律にこだわらない裁きの概念を強めていてよかったと思う。


穏やかな風景の中静かに暗い話なのでサスペンスっぽいような、ズタボロの死体がネズミを率いてくるのがホラーじみてるような分類にこまる映画。
私はこういう主人公に非があって話が展開する映画は全部サスペンスでいいでしょっておもうけどどうなんだろ。

最後の方で銀行家が私も妻に逃げられたし〜って話してたのはよくわかんなかった。ひとつの罪がたくさんのことを狂わせたって話の一つ?息子の彼女の話と違ってちょっととうとつだったからなんだかわかんなかった。
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