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ドント・ウォーリーのiandishotのレビュー・感想・評価

ドント・ウォーリー(2018年製作の映画)
4.2
ガス・ヴァン・サントの作品は、いつも無条件で劇場鑑賞なのだけど、この作品はどうかなあ、あんまり話題になってないし、そこまで本気じゃないのかなあとか思いながら、観に行ったのですが、観てよかったです。文字通りの良い映画でした。
自伝を元にした作品ということなんですが、展開も演出もガス・ヴァン・サントらしい切り口で、障害を負ったアルコール依存症のアメリカ人漫画家の一見特殊な人生が、誰もが自分の中に同じ痛みや欠落やそこから進んで行く力を見つけられる物語として、繊細に描かれていました。
役者の演技がみんな良くて、不自然なところが全くないのは、各役者にとっても、これが共感できる物語だからでしょう。
時系列がバラバラなのとクローズアップが多いのは、これが一人の人間のかつてあった人生を、本人の視点で振り返っているからで、大きな事件も、うんざりするような諍いも、ちょっとした会話も、思い出しながら、連想で繋がっていくような描かれ方をしています。
この映画は、すでに亡くなったジョン・キャラハンと、この物語の映画化を熱望していたというロビン・ウィリアムズに捧げられているわけですが、人生をどう受け入れるかという事と、死をどう受け入れるかという事は、映画の中でも当然のように隔たりなく繋がっていて、そして、その描き方は決して大袈裟にならず、誰の人生にもある、晴れた日の公園のスケートボード遊びのような本当に何気ない1日に、何か大切なものがあるのだと気づかせてくれます。
映画を観た後にそんな気分にさせてくれる、要するにとてもガス・ヴァン・サントらしい、良い映画だと思います。最後のシーンだけ、遠い視点からなのは、きっとそれが、この物語に対するガス・ヴァン・サントの目線なのでしょう
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