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スカイスクレイパーのsanbonのレビュー・感想・評価

スカイスクレイパー(2018年製作の映画)
3.5
片足なくても「ドウェイン・ジョンソン」にはハンデにすらならず。

今作も、最近隆盛著しい中国資本映画の一本に数えられる作品なのだが、やっぱりガワをハリウッド映画の体裁を装いながらも、中国人俳優がわんさか画面に登場してくる感じはいつまでたっても慣れないものだ。

こちとら、アメ公の映画を観てるつもりだったのに、一皮剥いたら実はチャイナムービーでしたと知った時のあのガッカリ感というか、なんか観賞する心構えが全然違ってきてしまう感覚、どなたか分かってもらえないだろうか。

それこそ、これまで観てきた作品は金はめっちゃかかっているのは十分理解できるが、脚本力ではお世辞にも満足のいく内容では決してないものばかりだった事もあり、それと気づいた瞬間の「あぁ、これ地雷だったか」という諦観が条件反射的に沸き起こるようになってしまったのは、非常に残念なところ。

ただ、間違えても中国映画だから嫌という訳では決してなく、それこそ近々公開される「唐人街探偵 東京MISSION」は日本が舞台で、そのうえ馬鹿みたいに金をつぎ込んだ作品ということもあって結構観てみたいと思っている。

それこそ、いくらでも出すから渋谷を貸し切りたいと願い出たがそれが叶わず、しまいには本物そっくりのセットを栃木県に作ってそのまま帰っていったという逸話は有名だし、そんな話だけでも作品に対する好奇心が無性に掻き立てられてくる。

しかも、そのおこぼれを頂戴する形で「サイレントトーキョー」や「今際の国のアリス」なんかが作られたのを見ると、本当に金がない日本が情けなくてしょうがなくなってくる。

断言しよう、これは嫉妬である。

そんな感じで、あくまで純正ハリウッドだと思って観てみたら中身は中国映画でしたというのが、あまり釈然としないだけなので、そこのところ悪しからず。

しかし、そんな心持ちでの鑑賞が功を奏したか、今作はこれまで観てきた中国資本映画の中では一番まともな作品だったように感じた。

というのも、見せたい画が作り手側の中に明確にあって、そのアイデアを活かす為の舞台装置もしっかり考えこまれ、そのうえで単純ながらもフリがきっちり効いたオチに繋がる脚本に仕上げられていたため、中国資本特有の"浅さ"をあまり感じることなく観終えることが出来たからである。(全然とは言ってない)

例えば、冒頭の大人が子供を人質にとるシーンだったり、今作の舞台となる世界一の超高層ビル「ザ・パール」独自の特殊設計だったり、果てはスマホに関する何気ない会話に至るまで、これらは全てのちの伏線を担っている要素なのだが、このスルーしてしまえばそれまでのやりとりや展開を、今作はその場だけの使い捨てにはせずに、ちゃんと意味のある設定にさせていたのは、いままでの中国資本ではあまり感じることのできなかった改善点のように思えた。

ただ、パールの球体展望施設みたいなところに設備されてた無数のディスプレイは、クライマックスで重要な役目を果たすのだが、機能としては一体何の用途であんなに備え付けられてたのかは全く分からなかったが。

また、冒頭にも述べたようにドウェイン・ジョンソンが演じる今作の主人公は、ある事件に巻き込まれた事で義足で生活することとなった元FBI特殊部隊のリーダーなのだが、正直言って今作で主人公が義足である意味はあまり活かされておらず、そのほとんどが義足とは思えないアクションの数々に、この設定本当に必要だったの?と思ってしまいがちなのだが、なるほど、この設定は物語上活かすためのものではなく、ドウェイン自身へのいわば"デバフ"として効果を発揮させる為のものだったのではないだろうか。

いまや、ドウェイン・ジョンソンといえば"人外"キャラ(どんなキャラだよ)が定着してきている俳優でもあり、そんな彼が五体満足のまま敵と対峙したところで、その時点でもはや勝ちは確定したようなもので、視聴者側の緊張感は若干削がれてしまう。

だからこそ、今作はあえてのハンディキャップとして片足を欠損したキャラ付けをすることにより、ある意味飽和状態になっていたギリギリ負けそうな"緊張感"を蘇らせる試みがあったのかもしれないと、好意的に捉えてみる。

とはいうものの、ドウェインならもはや首だけになっても一個中隊くらい軽く一ひねりでつぶしてしまえるだろうから、片足ごときではあまりその効果は発揮されていなかったが。

ということで、多少の解釈の違いなどはあるだろうが、やりたいことも見せたいものも十分理解したうえで観終えることが今回出来た分、マイナスからの評価であった事も大きいが、中国資本の名誉挽回の一本と言っていいクオリティにはなっていたと思う。

ちなみに、中国には消防法とかないんかいってくらい建築基準法ガン無視だし、二酸化炭素消化設備を人が直で食らったら酸素欠乏症で普通死ぬんだけど、そういうガバガバ具合が必ずしも面白さに影響を及ぼすものでもないので、今回は大目に見てあげよう。
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