たけのこ

プーと大人になった僕のたけのこのネタバレレビュー・内容・結末

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

観ていたほとんどの時間を「大人の現実は厳しいんだ」という説明的な描写に付き合わされてウンザリ。大人の私はそんなこと分かってるし、だからこそひと時の時間を映画の世界で過ごすのであって。「大人になって忘れてしまった少年の心を取り戻す」というストーリーラインはほとんど見えているのだから、それにそこまで時間かけなくていいよと。

その一方で、ロビンが家族との時間の大切さに気づくに至る描写が不十分で、ラストのカタルシスに参加できず。あれだけ厳しさを強調していた現実の毎日は続いていくのだから、これからどうやって折り合いをつけていくのか心配になってしまいます。子供に宿題ばかりさせずに伸び伸びと遊ばせてあげたいというのは親であればみんなそう思うんだけどね。

役員がロビンの上司を「仕事もせずに週末何をしていたんだ?」と非難する辺りも、仕事第一の人生観を否定しているのだか肯定しているのだか、本作のテーマに対してブレブレのように感じました。組織人としてはあの上司がけしてヒールとは思えないので、彼が役員にやり込められてもスカッとはしませんね。

大人になったロビンとプーとの会話劇が多いので、途中からはぬいぐるみ相手にユアン・マクレガーの一人芝居を延々と見せられている気分になりました。そこに被せてのズオウ退治の「一人芝居」は見ていて痛々しかったです。ユアンは「俺って何やってるんだろう?」と我に返ったりしないのだろうか?

同じテーマであれば、藤子不二雄の劇画オバQの方が名作だと思います。

(2018.9.25 追記)
「何もしないが、最高の何かにつながる。」

それ自体は深みのある言葉なのですが、この作品のラストでは無理やりこじつけた感が強く、「何もしない(=有給休暇の促進)が、最高の何か(=旅行カバンの売り上げアップ)につながる。」という極めて俗っぽい結論のように読めてしまう。

「何もしない」が結局は、資本主義的な見返りを得るためのあざとい行為であるように聞こえてしまうのです。

たとえ職を失い慎ましやかな暮らしになろうとも、家族との豊かな時間こそかけがえのない「最高の何か」である、というラストであれば納得できるのですが。
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