磔刑

クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士の磔刑のレビュー・感想・評価

3.0
「演劇部によるアーサー王伝説」

すごい可もなく不可もないのド真ん中。テンポが良いだけに不快感を覚えはしないし、極端に退屈とは感じないがこれと言って面白いと言うわけでもない。

アーサー王伝説に詳しい訳じゃないけど、要所要所でみせる有名な逸話を見てると、かなりアーサー王伝説にストーリーを寄せてるのがわかる。それがテンポの良さに繋がっているのだが、話の雑さにも直結してる。
円卓の騎士になるとか、騎士道精神に則るとか、円卓の軍団を率いて巨悪を戦う動機の部分が「これアーサー王伝説だから納得してね」って要素だけで済ませてて、行動原理にどうも違和感を覚える。これがアーサー王伝説の時代で扱ってれば、それだけの動機で十分なんだけど、あくまでも時代背景が現代かつ、騎士達が子供であるにも関わらず、その部分の乖離を意に介さず「はい!アーサー王伝説だがら!いくぞ!!戦えー!!」ってシンプル過ぎる動機はいくらんでも無理がある。つまり、現代を舞台にした意味がイマイチ見えない。

あと、子供達が主人公ってのもあって絵面が地味。一般ピーポのガキにいきなり本格剣技バトルで派手に戦えって言っても無理があるのは分かるが、全く騎士道的でも円卓の騎士感もない『ホームアローン』的な戦略で迎え撃つ姿にはアクション映画としての視覚的高揚感は皆無だ。

悪役にレベッカ・ファーガソンを起用してたけど、イマイチ彼女の良さが出せてなかったね。悪役としてのインパクトや、威圧感が無い。かと言って女性的な色気も対象年齢的な問題もあって出しにくい。その為、非常にキャラクター像が中途半端。結局は安っぽいデザインのCGキャラに頼ってて、それだったら初めからCGキャラでよくないか?って話である。

唯一良かったのはマーリン役のアンガス・イムリー(Wikipediaの日本語ページもFilmarksのキャスト欄すら存在しねえ…)。
トリックスターを存在感たっぷりで演じており、見るからにマーリン感溢れるパトリック・スチュアートを完全に食ってた。画面を支配するスター性もビンビンに感じ、今後の活躍に期待できる俳優だと思えた。

自分がアーサー王伝説に疎いのもあってイマイチピンと来なかったのもあるし、そもそもこの描き方はアーサー王伝説を子供の頃から慣れ親しんだ白人の子供の琴線に触れるように作られた作品であって、東洋の民には刺さらなくて当然の代物だ。まぁ、言ってみれば桃太郎を実写化して、「きびだんごがー」とか、「犬、猿、雉がー」とか外人に言っても伝わらないのと一緒なのである。
しかし、アーサー王伝説を知るキッカケとしてはそれなりに悪くもなく、良くも悪くも児童向けの域は出ない一作である。
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