磔刑

インターステラーの磔刑のレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.9
オススメ度☆☆☆☆
『2001年宇宙の旅』にドラマ性を足したような作品。その分万人ウケする娯楽作に仕上がっている。
宇宙規模の派手な映像から、親子の泣けるストーリーと幕の内弁当みたいな隙の無さ。
奇抜なギミックが得意なノーランにして珍しい親子愛のストーリーがメインなので人間ドラマが見たい人向け。
<以下ネタバレあり>









調子久しぶりに鑑賞しました。

当時劇場で観た時は、主人公が子供の成長の映像を見て号泣するシーンで同じように号泣しました😭😭😭
なんなら娘と別れるシーンですでに泣きました。

自分が宇宙を舞台にしたSFで色んな意味で良く出来ているのは『2001年宇宙の旅』だと思っている。
これは宇宙のスケール感、無限の虚無から来る畏怖を端的な映像で表現てきているからだ。
そして今作はそれとは正反対、『2001年宇宙の旅』に対するノーランのアンサーだと思っている。それはキューブリックが描いた宇宙の圧倒的スケール感は人間如きではどうすることもできない。というメッセージに対して、“愛”でなら解決できると回答しているからだ。

これがご都合主とも言えるし、そもそも科学ではないのでは?と思う気持ちもなくは無い。主人公がブラックホールに飲み込まれてからトントン描写に物事が上手いこと行き過ぎてて、もはや科学ではなく魔法なのでは?と思ってしまう側面はある。
しかし終始描かれる主人公の子供たちへの本物の愛情の説得力。その科学では証明できない愛が何かを突き詰めた時に人類の破滅を救うことができる。という部分への説得力のほぼ全てを担うほどのパワーがあるのは事実だ。
それに愛が困難や窮地を救うのは映画として実にトラディショナルだし、完全な科学的破滅から不完全な人間の化学反応が救うというのは実にドラマチックで良いと思う。

クライマックスからドラマか始まるノーランのお得意の様式美は今作も変わらず。
『2001年宇宙の旅』リスペクトの科学的に正確な描写から、「愛は何でも解決するんやで〜」と締めくくるのは確かに強引ではある。しかしいくつも伏線を張り、それを回収するカタルシスが納得のドラマティックさに昇華できている。
そういう意味では『2001年宇宙の旅』がクライマックスにかけて意味不明さを加速させるのとは正反対の構造だ。

個人的にはマン博士のバグが一番作品内で異質だと思う。
なぜかというとここだけの物語のスケール感かイマイチなんだよね。
小競り合いにしか見えない。
人間は大義よりも利己的な要素に左右されることの皮肉と葛藤を描いた作品的には凄く重要な場面だ。ヒロイックであつたはずのマン博士が本当は小心者で、過剰に自己保身に走る姿。その後自らの自己犠牲で人類の存続へと導く主人公との対比になるから。
でもそれが絵的にイマイチなのはノーランが致命的にアクションとサスペンスが苦手だからだ。前者はダークナイト三部作の唯一の弱点が、後者は『インソムニア』でも証明済みである。

いつも良い人で良いエンディングに導く役割のマイケル・ケインが悪党なのは意外な使い方。

自分は地球環境や自然現象すらコントロールできないちっぽけな人類が無限に広がる宇宙をどうこうできる訳ないと思っている。
それを『2001年宇宙の旅』は映像化してるから好きなんだが(面白いかは別として)。
で、今作はそれを“愛の力”で解決する実に科学的でない荒唐無稽な作品だ。でもマシュー・マコノヒーのキャリアハイと思わせる脂に乗り切った名演がそれに訴求力を与えている。
人の親でもない人間が子への親の憂いに完全にシンクロさせられてるのがその証拠である。
SF映画としてもスケール感の満足感があるし、親子のヒューマンドラマとしても面白い良いとこ取りの大作映画である。
磔刑

磔刑