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ある少年の告白のsomaddesignのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
5.0
毒親に翻弄される息子の話かと思いきや、信仰と自分らしさについての映画だった。

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アーカンソー州の大学生のジャレッドは、牧師の父と母の息子として何不自由なく育ってきた。ある日彼はある事件のせいで、自分は男性のことが好きだと自覚する。両親は息子の告白を受け止めきれず、同性愛を「治す」という矯正キャンプへの参加を勧められてしまう。自身を偽って生きることを強いるキャンプに疑問を感じたジャレットは脱出を試みるのだが……。

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俳優として知られるジョエル・エドガートンの長編監督第2作。

ガラルド・コンリーの原作「Boy Erased : A Memoir of Identity, Faith, and Family(消された少年:アイデンティティ、信仰、そして家族)」の映画化。この機会に邦訳が出版されてくれればいいのに。


バプテスト派の家庭で生まれ育ったジャレットが、自らの性的指向に戸惑いつつ自覚する。事件をキッカケに息子の性的指向を知ってしまう両親の動揺と、矯正キャンプへの参加を余儀なくされる一幕目。
信仰から自らの選択として矯正キャンプへ参加してしまう。夜明け前の暗く会話のない朝食シーンが印象的。

原作出版後、明らかになった矯正プログラムの内容は全米に衝撃を与え原作はベストセラーに。2014年にプログラム経験者の17歳の少年が自殺したことを受け、当時のオバマ大統領が矯正治療をやめるよう声明を発表し、一部の州でこれを禁じる法律が成立したものの、現在も34の州で整備が進まず、これまで70万人超の人々がプログラムを経験しているという。

ジャレットが信仰とアイデンティティの狭間で揺れ動き、幼稚で矛盾を孕んだ矯正プログラムに疑問を覚え、自分らしくあることを否定しない生き方を選択する二幕目。
LGBTに現代の聖書解釈をどう適用するのか、きっとしばらく解法は見つからなさそう。少なくとも狭義の解釈で教条的に人間性を否定するやり方は、キリスト教徒の人でも拒絶するんじゃなかろうか。

監督兼役者として矯正プログラムの指導者サイクスを演じたジョエル・エドガートンは「私たちは一人ひとり違うかもしれないけれど、愛という本質的な感情を共有している。愛は常に勝利する。愛はいつだって勝つのです。それがこの映画の描くところなのです」とコメント。

監督人脈なのか、母親ナンシー:ニコール・キッドマン、父親マーシャル:ラッセル・クロウらオーストラリア出身キャストが並んでる。

ジャレッドを演じたルーカス・ヘッジスは「マンチェスター・バイ・ザ・シー」以降「スリー・ビルボード」と話題作への出演が続いてる。どちらも繊細で精神的傷を内包した複雑な役どころを好演。ベテラン勢に引けを取らない熱演が良かった。
(もうすぐ公開の「ベン・イズ・バック」も似たような役っぽい。しばらくこの傾向続きそう)
ラッセル・クロウの優しさと厳しさを併せ持ち、父親と牧師の間で苦悩する姿が良い。
ニコール・キッドマンが臆せず老け役に挑み、どうかと思う髪型とファッションが『アメリカの母ちゃん』を大熱演。一人息子を溺愛してるがあまり矯正プログラムに送り込んじゃうし、溺愛してるからこそ真に息子にとって必要なことに気づける。

指導官のブランドン。やたら目つきが悪くて、どっかで見た顔だなーと思ってたレッチリのフリーやんけ!😳😳 オーストラリア繋がりなんだろか?

41本目
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