実際の少年兵をキャストに起用したジョニー・マッド・ドッグの監督。今度は本物の元囚人を使い（メインキャスト以外）、もと囚人の自伝を映画化。
投獄された主人公はタイ語の分からないイギリス人ってことで、タイ語の字幕もほぼなし。全然無くて問題ない。登場人物の会話があるのに字幕無くて分からないって点では全編手話で進む「ザ・トライブ」に近いかな。主人公目線で、言葉が通じないって意味では「バベル」的でもあるけど、そこまで言葉の壁は物語に重要じゃないか。囚人をキャスティングしている「塀の中のジュリアス・シーザー」との比較になるかなとも思ったけど、そうでもなかった。ボクシングシーンのカメラの荒ぶれ具合なんかは塚本晋也を彷彿とさせる気もする。刑務所の中でのし上がっていく「預言者」と通じるところもあるけれど、クライム映画ともちょっと違う。
と、色々比較対象が出てきそうな作品だけれど、とてもストレートで一貫した力強さとオリジナリティを持った作品だと思います。一歩間違えたら気色悪い絵面になりそうな、半裸でマッチョで全身タトゥーの男たちがひしめき合っている舞台を、芸術的でエネルギッシュに映している映像は素晴らしいね。で、しっかりと主人公にフォーカスを絞っているから、何を観るべきかもわかりやすい。男臭いし、気軽に観られる内容ではないけれど、ガツンとくるたまらん映画でした。
