アズマロルヴァケル

黒い箱のアリスのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

黒い箱のアリス(2017年製作の映画)
3.5
芸術路線のスリラー

・感想

映画全体は第一印象は『グットナイト・マミー』や『エヴォリューション』のような感じの映画なのかと思っていたのですが、観賞してみると予想通りだったものの、非常に独創性の高い完成度の高い映画でした。

要は深田晃司監督の『淵に立つ』やスペイン映画『マジカル・ガール』のように敢えて大事なところは描いておらず、本編では詳しく詳細や長い説明台詞などは一切なく、それどころかこの映画では悪役であるデヴィットとアリスの父親、ポールが助けたエリカとポールの関係性も謎のまま物語は進んでいる。

個人的には黒い立方体というだけで奥野浩哉のあの漫画に出てくるあの球体を彷彿とさせてしまったのだが、あくまでもタイムリープできる機能や文章や音声でメッセージを送る機能があるというのは説明されているが、あの黒い立方体はどうして森にあるというのは描かれていない。それでもこの物語ではきっと意味のあるものだろあなぁとは個人的には思っている。

映画全体は役者の演技よりも演出で勝負しているような印象。例えば、エリカとポールが復讐目的でアダムを殺そうとしているシーンではほぼほぼ引きの画で見せている。なので、エリカがヌードになっていても引きの画なのでそんなに見せてはくれない。

私としては独特な世界観が味わえたので好きではあったのですが、アリスが飼犬を見て泣き叫ぶシーンやエリカとポールがアダムを殺そうとしているシーン等がやや長めに見せているので他人によってはかなり冗長気味かも。そういう観点から、劇場公開の際は盛り上がりのない淡々とした映像の数々だったので寝落ちした人も少なくはないかも。

それでも、アリスが住んでいる邸宅の映像美や計算され尽くしたカメラワークはなかなか素晴らしく、解釈や考察が必要なストーリー展開と相まって玄人向けではあるものの、結構オススメできるSFスリラーだと思いました。