HicK

未来のミライのHicKのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
2.5
《それは子供なのか。これは芸術作品なのか》

【絵はすごい】
オープニングの上空からのショットや家の中の立体的なショットで一気に引き込まれた。その他ディテールの描き方もさすが。世界を引っ張るアニメーション力。

【テーマ】
見て感じたのは、大人との関わりとか、その他うんぬんで子供は育っていくという事。この当たり前の事に細田監督のカラーでもあるノスタルジーを感じて欲しいのかなと思った。

【それは子供なのか?】
ただ、自分と監督の相性の悪さを最も感じた作品にもなった。

くんちゃんの声…。キャラクターの奥にいる「大人」をはっきりと感じてしまう。子供の声ではない。完全に女性の声。俳優が悪いわけではなく、キャスティング。なぜ子供をそのまま使わないのか…。

監督作品を一通り見て思ったのは、子供のキャラクターを大人に寄せたがる傾向が薄らとあるような気がした。声だけでなく、どの作品の子供も理解力や思考がもはや子供ではない。今作はファンタジーの世界のくんちゃんだけならまだしも、現実世界のくんちゃんも制作側が使い勝手のいい「大人が入った子供」のようなキャラ設定だった。

子供を子供として描かないスタンスも声優に子供を起用しない事も、実は監督は子供が物語の邪魔になると考えているんじゃないかと思ってしまう。おまけに「公園に行くデス。自転車乗るデス。」というセリフ。不自然なセリフを当たり前のように言わせてしまう辺りも、子供をどこか記号的に見てるのかなと。よって、ノスタルジー演出も人工的に感じてしまう。

【これは芸術なのか?】
芸術性や独創性は"単なる思いつき"と紙一重なところがあるが、今作はどうしても後者だと思ってしまう(自分は芸術が何か分かるような人間ではないけど、そんな感じがする)。「理論がないファンタジーの芸術」ももちろんあると思うが、今作に限っては納得できるような情報をもう少し入れて欲しかった。というのも、キャラクター設定だけで首を傾げてる状況だったので、それを挽回できる"確かなもの"が欲しかった。

【総括】
なかなか監督の感性の部分が自分とは合わない。今作は、もはや子供の意味がないキャラクターと一周回って薄っぺらいストーリーで、好きになれなかった。ただ、監督の絵のスキルは日本トップクラス。この部分は推せる。

最後に関係ないが、まずそうなケーキの実物が見たい…。
HicK

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