4才のくんちゃんが”お兄ちゃん”になるまでを描いた作品。
お兄ちゃんになるとは、思いやりを持って相手の人生に関わるという事。受動から主体に変化し、挫折から立ち上がる姿を見せる事。
と同時に、ひいおじいさんや、母や父や、おばあちゃんがいて、初めて今の自分があるという「家族の中、その大樹の一葉」であると感じること。
言葉にすると良いテーマなのだが、比較対象がなく、おおむねくんちゃんの主観で話が進むのでとにかくウザい。
いや、くんちゃんも4才児としては十分マトモだ。というか母や父や未来のミライちゃんも全員マトモだ。
キャラクターが誰も破綻してないし、サプライズも特に起きないので、一番幼いくんちゃんが引っかかってしまうが、実際赤ちゃんの次に幼いのでなんとも心の向きどころがない。
映画の子どもに向かって「大人しくしろ」と言ってもしょうがないし、かといって「もっとやんちゃしていいんだぞ」と言ってもそんな事は起きない。
とにかく普通の家族の子育てが淡々と繰り広げられていく。
過去や未来への移動という、現実に起こりえないダイナミックな展開を何度も挟むのが、現実のくんちゃんには結構ミニマルに作用する。
(自転車が乗れるようになるとか、青いパンツを嫌がらず履くようになるとか)
「お母さんの子供時代が主人公ならもっとはちゃめちゃで良かったのに」
「ひいおじいちゃんの競争のくだり、めちゃくちゃ良い」
と脇役の部分ばかり思い起こされてしまう。
どうしてなのかと考えると、つまり、くんちゃんがあまりに普通に成長しているように私には感じられた作品である。
それはもちろん良いことなのだけど、普通の子が良い子に育つ話はなんとも言いようがない。