コーカサス

15時17分、パリ行きのコーカサスのレビュー・感想・評価

15時17分、パリ行き(2018年製作の映画)
3.6
“大きな目的に向かって人生に導かれる”

2015年に実際に起きた列車テロ事件をイーストウッドが映画化。
どこにでもいるごく普通の3人のアメリカ人青年が500人以上の乗客を救ったその“事実”はもとより、さらに特筆すべきは、彼らを演じたのは“本人たち”ということだろう。

本作を製作するにあたり、多くの俳優がオーディションに参加し、彼らを演じる俳優も決まっていた。…にも関わらず、何故イーストウッドは素人である当事者たちを起用したのか?
その問いに対し、彼は映像特典の中でこう答えていた。
「演技は本能的なもので、特別な知識は必要ない」…そして「本人の顔を見るたびに“いい顔”だ」と。

確かにフランスの精神科医・臨床学者のルイ・コルマンによる相貌(そうぼう)心理学では “性格は顔に表わる” という。
そして結果論ではあるが、実際彼らの顔はとてもいい顔で、その起用法は思いも掛けず良かったと思う。

自分だったらどうするか。
運命にどう対処すべきか。

今や巨匠であるイーストウッドの、ある意味彼らしくもあり、彼ならではといえる大胆な起用法は、さながら誰もが英雄になれる“アメリカンドリーム”のようにも感じられた。

79 2023