《現実こそがミステリー》
【理解できる狂気】
脳死した娘、その命をどう扱うか。脳死以前のように家で娘を＂育てる＂主人公。＂生きてはいない娘＂に対しての主人公の行動を怖がる周囲。やがて溝が深まり、狂気に辿り着いてしまう主人公。何が怖いって、そこに至るまでの流れがとても自然で納得してしまうこと。果たして、娘は＂生きている＂のか＂死んでいる＂のか。現実問題を追っていくだけで「ミステリー」にもなってしまうという怖さと切なさがあった。
【篠原涼子】
彼女の演技は1人の母としての感情がリアルだった。徐々に周囲とのギャップが生まれ狂っていく様も、当然の結果として受け入れられるほどの説得力があったと思う。「狂気」と言ってしまったが、それを含めて＂普通のお母さん＂にも見えてしまう。
【俳優陣】
登場人物たちは各々異なる考えを持っているが、全員に共感ができる。その考えの違いからくる動揺や対立も面白い。演じた俳優陣は全員素晴らしかった。特に山口紗弥加と松坂慶子がとても良かった。2人ともなんかリアル。泣きのシーンでは、背景となりピントが合ってなくても泣き続けている。泣きすぎたのか所々鼻声だったりするのが妙に刺さった。生死を問うクライマックスは心に焼き付くぐらいに演技のインパクトが大きかった。
【その他】
指輪、絵、少年、全ての伏線がクライマックスに活きてくる。物語としての作りも面白い。冒頭とラストにしか出てこない少年も本編とは関係ないのだが、世界は繋がっていると思えるいい表現だった。
【総括】
扱っているテーマも相まって「ドキュメンタリー」にも見えてしまう。『現実問題と向き合う事こそがミステリーだ』と言っているような物語がとても心に響いた。
