ひっきーくん

ドラゴンボール超 ブロリーのひっきーくんのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

僕「うーん、ここは?……椅子に縛られている……!?はっ、この気!隠れてるんだろう!!でてこい!」

???「…俺は悪魔だぁ…」

僕「な、なんだコイツ!ひぃ……い、家に返してくれ!俺はただクリスマスの日に友達とドラゴンボール超 ブロリーを観に行き、その感動をフィルマークに残そうとしてただけなんだ……」

???「一人用のポッドでかぁ…?」

僕「……ちょっと待てよ…、そのしゃべり方、ビスケットオリバ並の筋肉過剰搭載、そして若干珍しいその強キャラ悪役系島田敏ボイス… あなたは……」

???「……ブロリー……です」

僕「そ、そうなんですね。あなたの映画めちゃめちゃ面白かったですよ、ブロリーさん!!
ほどよいスピード感、メリハリのある太い線のキャラデザ、バトルのテンポ…!
Z時代におおすぎて萎えたシュビビビというただやたらと手数が多いことしかわからない雰囲気戦闘演出を極力戦闘シーンの末尾に持ってきて、単発ダメージでかそうな一撃一撃をしっかり見せるバトルから始めることで戦闘がジェットコースターみたいに楽しかった!!」

ブ「と、思っているのかぁ!」ブォン

僕「うお、あぶね!なにするんです、俺も惑星シャモみたいにデデーンするつもりですか!!
鳥山明原案脚本で、ぐうの音も出ないほどにドラゴンボールなブロリーのオリジン!なにより愛嬌が増して、完全な悪役とは言いきれない不安定な新ブロリーの魅力!パラガスの声が家弓さんの後任の土師さんじゃないのも悲しいけど、それを補う悪役っぷり!チライとギネという女キャラクターの可愛さ!!どれをとっても満点としかいいようが……」

ブ「オヤジィ…」

僕「ぶ、ブロリー…さん、なぜそんな悲しそうな…」

ブ「ブロリー…です」

僕「はっ!? 涙…っ!
お、俺も泣いている……! …このおれも… 泣いているのか!?
細かい演出を上げれば、父の死を知り、いよいよ抑制が効かなくなったことを表現するあの瞳が砕けちって消えたところとか!もう作画のカロリーがカンストしそうなところを、格ゲー版のドラゴンボールファイターズ並の神グラフィックのCGモデルを混ぜこむことで滑らかかつ自然に入れていたというのに、この俺に涙だと!?」

ブ「はい…」

僕「……そうか、俺も感じていたあの感覚、あなたも味わっているのですね…」

ブ「やっと戦う気になったようだなあ……」

僕「……『ブロリー』は悪役だったはず、誘拐してきた人々をあえて殺さず、故郷を消し飛ばして嘲るあの無慈悲っぷり。 コミュニケーション不能感マックスの『カカロットォ……カカロットォ!!』みたいな台詞の端々から、溢れる狂気!力強すぎてZ戦士たちが全く歯が立たなくてこれどうやって勝つの……?という絶望感。バイオ化したりクローンされたり、あまりにもしつこい執念。ぶっちぎりの最強キャラとして演出され、あらゆる攻撃を受けきるタイプのラスボス感。つまりあの容赦なさこそ俺たちが愛した悪役ブロリーだったはずなんだ…」

ブ「……ははは!カカロットォ!息子は可愛いか!!」

僕「たしかに、シナリオ上の悟空の敵キャラに対する意味不明な甘さもちょっと違和感だ…。今回ブロリーが悪役でないからと言って許せるかもしれんけど、フリーザ様は完璧に悪人だし、逃がす意味もない。ベジータが善戦してるところに割り込んで余裕ぶっこいてただのサイヤ人モードでボコられてすぐにスーパーサイヤ人にしたりと、あまりにも短慮な部分が見えすぎる。
新ブロリーにしてみても完成されてる人気悪役をわざわざリブートで実は悪くないんですよー、みたいな上等な料理にハチミツをぶちまけるようなことをして許されるのは原作者であるというただそれだけの理由だと正直思う。わかるよブロリーさん」

ブ「………貴様たちが戦う意思を見せなければ俺はこの星を破壊し尽くすだけだぁ…」

僕「……でもね。たしかに前のブロリーほど人気になれないかもしれないけど、新しいブロリーには救いがある。
最近のドラゴンボールではたしかに多い展開だけどそれでも、戦いだけが全ての決着じゃないと、あの悟空が言うことに意味がある。
それに旧版のブロリーリスペクト演出もすごかった。空間の歪みの色が何重にも変化していくあのパワー演出。掌底に気弾を貯めたまま相手に密着で当てる技、相手をもみじおろしにする技、前のブロリーの要素を受け継ごうとする意思はあったよ……!ブロリーさん」

ブ「ううぐぅ、!気が……高まるぅ……」

僕「認めよう、ブロリーさん。たしかにあれは面白い映画だよ……!
それに、


素晴らしいブロリーだった……!!」



ブロリー「あああああ!溢れるぅ……!!!!!
ああああああああああ!がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




気がつくと僕は、自分の部屋にいた。
うたた寝をしていたらしい。妙な夢を見た気分だ。
まるで、誰か懐かしい人を見たような、喜びと戸惑いが不均等に混ぜられたあの感情。唯一残るそれだけが、その夢の内容を推し量る、手掛かりだったのだろう。
だが淡い感覚も、身体の目覚めと共に薄らいでいく。
ただ、目元を濡らす涙のあとだけが、なにか悲しい夢を見た証のような気がするのだ。

了。