山岡

眠狂四郎 女妖剣の山岡のレビュー・感想・評価

眠狂四郎 女妖剣(1964年製作の映画)
3.5
円月殺法シーンでストロボ撮影を導入したことで有名なシリーズ4作目。

前作より格段に面白い。
オープニングの菊姫の入浴シーンの質感からこれまでの作品と違うように思える。

ストーリーは大きく分けて二つの柱で構成される。一つは「米問屋の備前屋と大奥の医者、さらに若山富三郎が1作目に続いて演じる僧侶、珍孫が共謀してアヘンを密輸して大奥に横流し…それを黙認してもらうために老中の水野忠成に隠れキリシタンの潜伏情報を密告する…という悪事を働いている奴らを成敗する話」、もう一つは「鳥蔵という隠れキリシタンが、自身の信奉している浜松のびるぜん志摩という修道士を助けてほしいと狂四郎に依頼する、さらにそのびるぜん志摩が狂四郎の出生の秘密を知っているらしく、その女に会うために狂四郎が浜松まで旅をする話」。その二つの話が交差したり、あんまり交差しなかったりする座頭市シリーズでもお馴染みのスタイルだ。

本作はとにかく映像的なケレン味のインパクトが大きい。円月殺法のシーンではストロボ撮影により刀が弧を描く残像を美しく切り取ったあと、相手を斬り殺すまでの流れをスローモーションにして雷蔵の殺陣の美しさを見事に際立たせている。
投獄中のバテレン、ヨハネス・セルディニイが獄中に藤村志保と酒を投入され惑うシーンでは、彼の信仰がぐらつく様をカメラの動きで表現(狂四郎が春川ますみに毒をもられるシーンでも同様の手法が用いられている)。

そして女優たちの濡れ場の数々。藤村志保、春川ますみ、久保田菜穂子いずれもが妖艶な表情を見せる。

あと、過去3作ではわりとモラリストのように見えた狂四郎が、これまで以上に非情な行動を見せてくれるのも嬉しい。転んだとはいえ、人助けを目的に宗教を捨てたヨハネスの首を切り落としたり、自分のことを欲する女を他の男に抱かせたり、自分を求める、家族に近い女を服を剥ぎながら殺したり…いよいよ狂四郎のキャラクターが浮き彫りになってきた感じでますます好きになった。

惜しむらくは若山富三郎の見せ場の少なさ…1作目と違って棒のようなものを持って殺陣っぽいものは見せてくれたのは最高なんだけど、あんなにあっさり消えられると興醒めしてしまう…。
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