Masato

クレイジー・リッチ!のMasatoのレビュー・感想・評価

クレイジー・リッチ!(2018年製作の映画)
4.2

映画史を変えた隠れた快作

ハリウッド映画なのにもかかわらず、オールアジア系のキャストと監督や原作者もアジア系という異例の作品。それに留まらず、アメリカでは興収1億6千万ドルの大大大ヒット。アメリカを含めて、世界では2億ドルを稼いだ。

本作が映画史を変えたという理由は、ホワイトウォッシュをしなければヒットしないという固定観念を打破したことだ。
ホワイトウォッシュ問題は、日本では問題が表面化されていないが、移民国家のアメリカでは現在大問題に。とある映画では、監督が謝るという事態もあった。とは言えど、本当に売れるのかもわからなく、いままでに白人以外のキャストで完全に構成されたハリウッド映画はなかった。そこで、今作はついに証明したのだ。これを聞けば映画史を変えたという言葉は伊達ではないということはわかるであろう。これから、アジア人がハリウッドで活躍できる場が増えるだろう。

映画自体は、庶民と金持ちが恋をすることで産まれる葛藤を描いた王道ラブロマンスである(庶民と言ってもNY大学の教授というエリートなのだが…)。庶民の女性を当然ながら金持ち側の親は許すはずがなく…といったベタなストーリーで、展開は読める。だが、幸せのために、家系のために、家族のために…と闘う女性の姿が美しく、カッコいい。不覚にも泣いてしまった。それに、金持ちを小馬鹿にした感じでギラギラ感に嫌味がないのが良いし、終始コメディで面白かった。

本作は、1995年にミシェルヨー扮するミランダが、アジア人だからとホテルを門前払いされそうになるところから始まる。まさに、アジア人は売れないからと門前払いされる現在のハリウッド映画界のようだ。
劇中で主人公が庶民だと金持ちにいびられながらも立ち向かう姿は、ハリウッドで活躍しようとするアジア人のメタファーであると思う(#Starring John Choとか)。どんなに貶されようとも、逃げはせずに闘ってみせるという意気込みを感じた。その結果、批評家から絶賛され、ホワイトウォッシュ問題を打ち砕き、勝利を手にした。売れたからこそ説得力のあるテーマ性であり、そう考えると非常にチャレンジングな映画であると言える。前例がなかったから、ワーナーは一か八かの賭けに出たような気分だったと思う。ワーナーに拍手。

それなのに、邦題は「アジアンズ」を抜いた。日本の映画業界は未だにホワイトウォッシュを続けるようだ。日本の映画界にはアホしかいないのかと、怒りを通り越して無念しかない。ほとんどがアジア人で構成されたハリウッド映画と宣伝すればいいのに、なぜしないのか。この映画から一切学んでないのが哀しい。

キャストはトップスター勢揃い。ベテランのミシェルヨーとケンチョンはもちろんのこと、最近注目されているジェマ・チャン、オークワフィナが出ていてすごく嬉しい。ソノヤ・ミズノは大好きなので、特に嬉しい。主役のコンスタンス・ウーはTHE・等身大で雰囲気も演技もバッチリだった。

G.I.ジョーを改悪させ、グランドイリュージョンを微妙にしたジョン・チュウ監督が嫌いだったが、今作でガラッと印象が変わった。今後も期待したい。
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