ルイまる子

万引き家族のルイまる子のレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
5.0
ホントいい映画でした。後半もう涙が溢れ止まらず。しかし、泣かせるだけではなくシビアな現実と向き合わせもする。幸せとは何か?この人達は間違っているのか?視聴者に問う社会派映画でもありました。確かに彼らは法には従っていない、しかし、本当に大事な自分基準はしっかりと持ち自分に対しても人に対しても誠実である事からは絶対に外れない、心から子どもたちを愛し、健全に育み、子供達も絶対この家族と居て楽しかった筈だ。。だからこそ、「社会のルールを守る」が、実は悪魔みたいな人だらけのこの社会で、彼らは犯罪者?いやいや「天使」でしょう。。。どう見ても天使だ。天使は天使だと理解されないこの世はやはり悪魔だらけなのか。

法の外で暮らしている家族。軽犯罪(万引き)で足りない生活費を補っているが、奥さんはクリーニング店で働いているし、旦那さんは肉体労働、娘は軽い性風俗で働いているし、おばあちゃんは年金プラス時々入るお金があるし(慰謝料?)で、全く貧乏というわけでもない。やたら一日中なんかしら食べているし、毎日ビール飲んでるし、本当にヒモジく骨と皮みたいな人からすると、又は戦争直後の食料不足日本からすると、これがなんで貧乏なん?なんで万引きしないといけない?なんとかギリギリやっていけるんじゃ?という疑問も生まれる。それは置いといて。いやいや、多分万引きが家業だったのかな。リリー・フランキー演じるお父さんがその卓越した技術を誰かに受け継がせたかったのかもしれない。

【この後ネタバレあり】

名台詞がいくつもある。安藤サクラの言った言葉以降、私は涙が止まらなくなりました。
「いいよー私は幸せだったから。楽しくて楽しくてお釣りが来るくらいだよ」。

それから映画の中で直接は語られていませんが、いくつも彼らの生い立ちを想像させるヒントがありました。まずは名前。

お父さんが、連れてきた男の子に自分の本名「しょうた」と名付けている。これは嘗て愛されず育った自分を、自分が父になって育て直ししたかったからじゃないかな?

亜紀は風俗で「さやか」という源氏名だったが、それは自分の実の妹の名だった。そこにはどういう感情があったんだろうか。親に可愛がられ実は悪い子なのにいい子のフリをしてる憎き妹になってセーラー服で陵辱している気分だったのか。又は羨ましかったからその名で風俗でセーラー服を着ているのか。しかし、あの4番さんのエピソードは必要かな。。要らなかったのでは?それより、帰宅してすぐに何かいいことあった?と亜紀の心の中をすぐ察知してくれるおばあちゃんだ。足がいつもより冷たいから何か悪い事があったと気付いてくれる。実の両親からは得ることが出来なかった絶対的安心感だ。これが本物の家族ですよね。

安藤サクラ演じるお母さんは、後半、子供が出来ない身体だと、それから世の母親に復讐したかったと言っていた。自分も母親から虐待されていたのかもしれない。虐待された子供の気持ちに詳しいと思わせる台詞があった。(子供が出来ないのは、夫のリリー・フランキーが不能だったからでは?出来たと喜んでた所で察しましたがどうなのだろうか^^;)

家に戻った後虐待を受けていた少女じゅりは、「服を買ってあげるからこっちおいで」と実の虐待母に言われても、また殴られる事察したし近寄らず「いやだ」と言えた。この成長ぶりにも涙が出た。安藤サクラ演じるお母さんから教えてもらったから。本当に愛してくれる人は殴ったりしない。抱きしめ可愛がるものだ。その言葉を信じた。そしてこの世は地獄じゃないことを知り、悪魔みたいな親以外にも自分を愛してくれる人たちの存在を得て(今はいないが)心が何倍も強くなった。

たった1年位だったが、彼女の心は強くなって良かった。きっとこんなDV親に育てられても、大人になったらとっとと家を出れば良い。又は虐待されたら児童相談所に自分から駆け込めるだけの勇気は今はある。そして大人になったら「おじさん、おばさん」を探すだろう。

主役の少年は頭の良い子だった。子供の目は鋭い。おばあちゃんが亡くなった後に悲しんではいても、すぐに隠してあったへそくりを見て大喜びする、何より「金を優先する」二人をじっと鋭い目で見ていた。施設に入った後再会し、僕を置いて出ていこうとしたの?と訊いたらリリー・フランキーはそうだ、と答えた。後で迎えに来るつもりだったかもしれないが、8割は少年を残して逃げるつもりだったのだろう。その昔、少年を初めて見つけた時、車内強盗でパチンコ屋の前に放置された翔太を偶然見つけた。助けるつもりでもなかった。そんなリリー・フランキーのいい加減な本音を確信し、それらをいくつも繋げ真実に近づけようとした。この人達と居るより、ちゃんと生活したいと判断したんだろう。そう、万引きしてることを知っても見逃してくれていた駄菓子屋ももう今はない、店のおじいちゃんも亡くなってしまった(このエピソードは古き良き時代が終わった事を意味する)。いつまでも犯罪を続けられるわけないと判断したのだ。

しょうたは賢い判断だった。しかし、もう少し大きくなり、大人にも弱い所がある、リリー・フランキー安藤サクラは悪い人だが、実はそこいらにいる親より遥かにまともなだと改めて気づく日が来るだろう、その時はまた「おじさん、おばさん」を訪ねればいい。
ルイまる子

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