グラッデン

万引き家族のグラッデンのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5
コロッケ食べる?

是枝裕和監督の最新作。先日のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、大きな注目を向けられておりますが、鑑賞前の印象どおり、近年の作品と比較して、観客を選ぶ作品であったと思います。

鑑賞を終えて、端的な感想は述べづらい内容ではあるのですが、是枝作品における継承と深化を感じる作品だったと考えています。

継承されたものは、日常を中心とした描写を通じて家族的な繋がりを表現していた点です。家族ではなく、家族的と書いたのは、登場人物たちが、実際の家族ではない人々もいたからです。作品ごとにアプローチは異なり、鑑賞者の立場とシンクロするものもあったのではないかと思います。本作においては、物語が進むごとに、家族としての疑似性が明らかになるという点において、繋がりの部分がより強く意識するかたちになったと思います。

一方、深化=より深く踏み込んだものは、血縁的結合による家族、それによって強調される「絆」なるモノに対する疑念を投げかけた点です。『海街diary』に代表される「本当の家族でなくても絆を深めることができる」というポジ要素に留まることなく、「本当の家族であることは大事なのか」というネガ要素の視点を入れることで、テーマに対する異なる見方が出来たのではないかと思います。是枝監督のフィルモグラフィを、一歩踏み込んだモノを提示した印象は強く、ある領域に踏み込んだことで見えたものがあったと思います。

その点においては、安藤サクラさんと松岡茉優さんの存在が非常に大きかったと思います。2人の台詞にある言葉、そして人々に向ける視線の鋭さは、節々に心をエグるものがありました。周囲に対する距離間を感じさせながらも、人懐っこさも垣間見せる緩急のある演技を含めて大変素晴らしかったと思います。

本作は、是枝監督が継続的に描いてきた「人の繋がり」を下地にしながらも、今までの作品には無かった「仄暗さ」があったと思います。
そして、作品で描かれた暗部が、今そこにある現実にオーバーラップして明らかになる状況には頭を抱えたくなります。だからこそ、改めて、強固な絆を求めるのではなく、本作で描かれたような、緩やかな繋がりの存在が大切ではないかと感じさせられました。