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万引き家族のcomaのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.3
演技力どうこうじゃない、役者がそこにいて演じているって実感がない…ドキュメンタリーでも見てるようでした。
本当に大事なことは、伝えなきゃいけないことは、家族には面と向かって言えなかったりする。
声にならない声はいつも本心だ。(字幕が必要だと思うよ、勿体ないよ。その不親切さが贅沢ね)


血で繋がっていないという緊張感。犯罪の上で成り立っている危うい暮らし。それでも、家族のかたちを崩さないように、各自持ち場を離れないように。
大きな敵に見つかれば、皆バラバラになってしまうよ。
時折、以上のことを忘れてしまう程に…やっと立っているような古びた民家で肩を寄せ合う6人の暮らしぶりは、確実に一般的な、普通の家族のそれでした。

"すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。"
建前はご立派ね。…贅沢したいって訳じゃないんだよ。最低限の生活すら手に入らない、誰も保証してくれない。もしくはいつ普通の生活を失うかも分からない。
リアルな諦めの空気が肌に刺さる。
望んでも、普通が手に入らないなら盗るしかない、演じるしかない。
薄皮一枚ぶん、違和感のある普通の暮らしを守る日々。
何でもない顔して、皆必死じゃないか。

変な数えうた
コロッケの食べ方
押し入れの宝物…
嘘だって何だって、幸せを身に染ませて生きていきたいね。その為には、身を寄せあって生きる糧を作りたい。小さな罪を重ねながら。…その気持ちは否定できないから参ったね。
"普通に、人並みの幸せな状態で暮らした"時間があった。染み付いたその思い出で人は生きていける、生きていけたらいい。
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