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万引き家族のmanamiのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
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大きな災害などに遭った子どもが、その様子をごっこ遊びで再現することがある。抵抗できなかったその状況を再現し、今度は自身がコントロールすることによって、心のバランスを取り戻す。心の中を整理する。信代がリンを可愛がる様子に、火傷の痕を見せ合う様子に、そんな心の働きを感じる。
それにしても安藤サクラは凄い。「ママ?お母さん?」と訊かれた際の信代の表情、仕草、静かな場面なのに迫力を感じる。底知れぬ演技力。
6人で口悪く笑い合ってる様子が幸せそうで、「血が繋がってない方が期待しないから、上手くいく」と自らに言い聞かせるように話す彼らを応援したくなる。
でも自分達だけが手を汚すならともかく、子どもにも同じことをさせるのは、やっぱり認められない。だけどもし、父ちゃんが祥太に教えていないという設定だったら、ここまでのリアリティは出せなかっただろう。
そんな感じで鑑賞中ずっと、「でも」「だから」と相反する気持ちが交互に湧き出てくるから、息苦しい。
特に祥太とユリは存在自体が辛い。二人で路地に駆け込んだ時、祥太がユリに「おばあちゃんのこと好きだったなら、忘れろ」と話す。その時に商店街の音楽として流れているのが、唱歌「ふるさと」。この二人の、この場面に、この歌とは。冒頭から泣かされるわ。
そして二人が真夏の公園で、セミの幼虫を眺めたり抜け殻を集めたりして遊ぶシーン。二人とも表情がとても生き生きしている。手話で「遊ぶ」は両手の人差し指を立てて上下に動かすんだけど、これはチャンバラ遊びを表しているそう。チャンバラ遊びは一人じゃできない。遊びはやっぱり、一人よりも相手や仲間がいる方が楽しいんだよね。ラスト、ベランダでのジュリの表情を見て、そんなことを考えた。

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