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北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイのumihayatoのレビュー・感想・評価

5.0
アジアンドキュメンタリーズにて

北朝鮮の「祖国解放記念日」を祝う政府主催のイベントで、海外のロックバンドとして初めてコンサートを行うことになったスロベニアのバンド「ライバッハ」
本国では全体主義やファシズム的な出立ちでパフォーマンスし、「礼賛か批判か」と物議を醸し、右に左に全方向から非難轟々の彼等がなぜ招かれたのか。

彼等と北朝鮮の主催者が揉めに揉めながら当日を迎えるまでのドキュメンタリー。

非常に興味深かったし、仕事でバンドの海外ツアーに何回かついて行ったこともあり、「わかるわかる」的なところもチラホラ。

「どんな国でどんな文化だろうと、出来るだけバンドのやり方でライブを成功させたい」
と思ってるのはバンドも北朝鮮の主催者も実は一緒で、待っているのは更に上に決定権がある「検閲」だった。

ライバッハチームの
「体制や思想の違いで差別はしない。お互いの文化を尊重して双方ともに礼儀を尽くすべきだ。」(あれを削れあれを辞めろと言われすぎてちょっと怒ってたけど)という、日本にいて北朝鮮関係の報道を見ている限り、到底真似できない姿勢にはとても好感が持てるし、「出来ることをやろう」とグータッチしながら言った北朝鮮の主催者にも「中間管理職はどの国も大変ですなぁ」と微笑ましくなったりもした。

なにより「太陽の下で」とはまた違った市井の人々の姿に、自分の中に出来上がったバイアスを感じ、これまでの認識が崩れていく感覚があり、これは色々見る必要があるなと思ったり。
国同士の外交ゲームに教育や規制で国民感情を利用するのは本当にやめて欲しいなあと思ったり。
文化交流ってスゲーんだなと思ったり。

非常におもしろかった。
おすすめ。
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