タキ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのタキのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

公開当時最寄りの映画館でやってなくて車で40分の映画館に行くにも日程があわなかったなぁなどと思い出す。去年のWOWOW放送分をやっと見た。どうして今頃なのかというともうこれでタランティーノの作品は9作目で10作で引退しようかと言ってるらしいのでなんだかもったいなくてという貧乏性な理由。いまひととおり調べたいことやインタビューを読んでじわじわとサイコーだったことを噛み締めている。近日中に2回目を見るために録画は消さないでおく。

物語は静かに進行していく。淡々と1969年のハリウッドの街を映し、落ち目の俳優とその専属スタントマン、将来有望な新人女優の日々を追いかけていく。クスクスと笑えはするけどドラマチックな展開はゼロ。拍子抜けするぐらい何もない。けれど小ネタ満載の画面からはハリウッドと映画への愛が溢れている。ハリウッドの街並み、劇中劇の作り込み方ひとつ見ても監督が心底楽しんでいるのがわかる。
ストーリーがシンプルであるがゆえにレオ様とブラピ、マーゴットロビーの芝居のセンスが光る。リックがセリフ忘れの自己嫌悪でトレーラーの中でひとりキレちらかして、「酒やめる!」とか言って酒の入った瓶を捨てる前にいつもの調子で思わずひと口飲んじゃうとこは爆笑した。クリフのヒッピーコミュニティ訪問が劇中西部劇より西部劇だったのも面白かった。なにより足るを知るって感じで飄々としていてアクションもカッコよくて黄色のアロハがめっちゃ似合ってて妻殺しのうわさが立ってるミステリアスぶりがドストライクの私得だった。マーゴットロビーはこれまで彼女がやった役とは対極の可憐な役。75セントのお金を払わないで映画館に入ったり鑑賞マナーも悪いんだけど浮世離れした感じで憎めない。衣装も可愛い。全部可愛い。
そしてたっぷり時間を使ったハリウッドの日常は1969年の8月9日の夜に集約されていく。ニコニコ笑って見ていたらいきなり究極の理不尽に叩き込まれる。恐怖の中に笑いを仕込むタランティーノ節が炸裂してイッキにテンションもあがる。リックのマイ火炎放射器のくだりになるとテンションが振り切ってて笑いしかでてこない。
シャロン・テートが殺される実際にあった事件(ロマン・ポランスキーの妻で当時妊娠8ヶ月だった女優のシャロン・テートと元婚約者で世界的なヘア・スタイリストのジェイ・セブリング、ポランスキーの親友ヴォイテック・フライコウスキー、その恋人でコーヒー財閥の相続人アビゲイル・フォルジャーが自宅で惨殺された)があったことは映画を見た後に知った。映画ではあの日彼女は殺されなかった。ヒッピーコミュニティにいたカルト信者の若者は急に目標を変え、隣家に押し入ったところクリフとその愛犬、リックとその妻にボコボコチリチリにされ、シャロンはその後も生きていて隣人と仲良くお茶を飲むという世界がそこにあった。犯人以外は誰も死ななかった安堵感が倍に膨れ上がる。宇多丸さんのインタビューでタランティーノが「シャロンを墓から救い出す」って言っててさらに心が震える。
予備知識あった方がいいというレビューをたくさん見たけど、なくても(あとで事件の内容を知っても)充分感動できることをお伝えしたい。

宇多丸さんとタランティーノの対談はTBSラジオで聞くことができます。1番下に貼っておくのでよかったら聞いてみて下さい。シャロンのことを言及したよいインタビューです。↓


"心の光景”を再現!クエンティン・タランティーノ監督が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を語り尽くす https://eiga.com/movie/89421/interview/

ブラッドピットインタビュー
https://screenonline.jp/_ct/17296440
レオナルドディカプリオインタビュー
https://screenonline.jp/_ct/17296430

映画のキャリアを築けてこられたことが奇跡『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』タランティーノ監督、ディカプリオ来日記者会見
https://www.tst-movie.jp/report/onceuponatimeinhollywood-kk-20190826.html

タランティーノ監督が『ワンス・ アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の
舞台裏を語った貴重なインタビュー動画 https://cinefil.tokyo/_ct/17321702

ディカプリオ&タランティーノによる『ワンス・ アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 キャラクター解剖
https://youtu.be/Asxtv5mB7ac

クエンティン・タランティーノ監督、宇多丸と映画好き同士で意気投合した瞬間。【ラジオ独占インタビュー】
https://www.tbsradio.jp/404981
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