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グッバイ、リチャード!のたくのレビュー・感想・評価

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)
3.6
ステージ4の癌で余命半年を告げられた大学教授の最期の生き様を6章のチャプター仕立てで描いてて、ジョニー・デップがこんな自然に人間味溢れる役を演じてるのはほんとひさびさ、っていうか「ギルバート・グレイプ」以来じゃないかな?彼のこういう普通の人の役を常々見てみたいと思ってたので、その点では満足した。

残り少ない生を知って初めて本当の人生に目覚める話は黒澤明の「生きる」を始めとして定番ジャンルで、ふるいにかけた大学のクラスの生徒たちに既成概念にとらわれない本当の生き方を教えようとするリチャードの姿に「いまを生きる」のロビン・ウィリアムスが重なった。
彼が妻と娘との団欒で病気を打ち明けようとしたところで二人からキツめの打ち明け話で先制パンチを喰らう冒頭で、リチャードがこれまでいかに家族とちゃんと向き合ってなかったかがサラっと示される。
娘のレズビアン設定と呼応するかのように、リチャードの親友のゲイを思わせるような過剰な愛情表現とか生徒からのアプローチがあって、これはおそらく人生の残り時間を自覚したことで既成概念のしがらみから解放されたことの象徴なんだろうね。

彼が大学で文学を教えてるのに文学的な引用を一切しないのがキャラ設定としてちょっと物足りなくて、もう少し教養あるところを見せてほしかったのと、終盤の家族との別れがあまりにあっさりなのが面食らったね。
ラストの分かれ道のシーンはチャップリン「偽牧師」をちょっと連想した。
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